本連載は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。今回は、マーケットが平時から有事に変わる「異常検知」を捉えて、ヘッジファンドへの投資リスクを管理する方法について見ていきます。
市場が平時から有事に変わる「異常検知」を捉える
VaRやESでは計測期間における「損失発生件数」や「発生額」に注目が集まるが、実務上はテールリスクがどのようなタイミングで発生するかの時間依存・確率変動にも注目することが重要である。
わかりやすく言うと、マーケットが平時から有事へ変わりつつある状態を「異常検知」としていかにして捉えるかが重要ということになる。
なぜなら、金融危機などボラティリティが下方に高まる局面では、各資産間での相関が過去の平均データと比較して異常に高まる傾向が生じたり、クレジットスプレッドが一段と拡大することも多く、ヘッジファンド戦略に負のリターンがもたらされやすいとの分析結果があるからだ。
レラティブバリュー戦略※1は平均回帰戦略※2や流動性リスクをとっている分、金融危機時に負の歪度や大きな尖度が生じやすいとの学術研究もあるほどだ(流動性が乏しい分、ミスプライシングにより割安に取得できるとの見方からリスクテイクする)。
※1:割高と割安などの相対価値を見極め、ロングとショートを組み合わせることによって生ずる価格差で収益を上げる投資戦略
※2:市場はいずれ適正価格・本質的価値に戻るとの考え方がベース
そのため、レラティブバリュー戦略をとるヘッジファンドに投資しようとする場合は、クレジットスプレッドのワイド化の兆候に加え、各資産の相関が時間の経過ととともに高まる場面や相互相関(タイムラグを考慮した相関)が予想される局面の「異常検知」をいかに捉え、リスク管理につなげていくのかをデューデリジェンス(調査)でしっかり見極めることが重要であろう。
中村 貴司
東海東京調査センター
投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)
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東海東京調査センター
投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)
山一證券、メリルリンチ日本証券、損保ジャパンアセット(現SOMPOアセット)などでの富裕層・法人営業に加え、年金基金、投資信託のアナリストやファンドマネージャーとして新興市場やオルタナティブを含む幅広い市場・商品の担当責任者を経て、2016年に東海東京調査センター入社。
現職では短中期の戦術的資産配分(タクティカル・アセットアロケーション)やオルタナティブ投資(ヘッジファンド・テクニカルやコモディティ戦略含む)の視点を踏まえたグローバルな日本株の市場分析等を行う。他の代替資産・戦略としてJリート投資戦略、ESG投資戦略、行動ファイナンス投資戦略などもカバーしている。
英国国立ウェールズ大学経営大学院MBA。アライアント国際大学・カリフォルニア臨床心理大学院米国臨床心理学修士号(MA)。慶應義塾大学商学部卒。国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)、国際テクニカルアナリスト連盟検定テクニカルアナリスト(MFTA)、CFP、英国王立勅許鑑定士(MRICS)、不動産証券化協会認定マスター、中小企業診断士。
日経CNBCなどのTV・メディアに出演。日経新聞、QUICK、ロイター、ブルームバーグ、時事通信、東洋経済オンライン、幻冬舎ゴールドオンラインなどでも執筆、コメントを行う。ヘッジファンド・テクニカルのキャリアとして世界のテクニカルアナリスト協会を束ねる国際テクニカルアナリスト連盟(IFTA)の理事などを歴任。早稲田大学ビジネスファイナンスセンターや同志社大学、青山学院大学等で講師を務める。
著書には投信営業に行動ファイナンスアプローチなどを活用した『会話で学ぶ!プロフェッショナルを目指す人の「投信営業」の教科書』(2021年)がある。
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