(※写真はイメージです/PIXTA)

定年退職を迎え、「これまで頑張ってきたのだから、老後ぐらいは好きなことにお金を使いたい」と考える人は少なくありません。旅行や趣味、外食など、現役時代には抑えてきた支出を解禁すること自体は、ごく自然な流れとも言えるでしょう。一方で、老後の収入は年金が中心となり、医療費や介護費など、将来を正確に見通しにくい出費も増えていきます。「十分な貯蓄があるから大丈夫」という判断が、数年後に揺らぐケースも珍しくありません。老後の贅沢は、いったいどこまでが“許容範囲”なのでしょうか。

「一生に一度くらい、いいよな」

都内近郊に住む元会社員の佐藤健一さん(仮名・68歳)。大手メーカーで長年働き、60歳で定年退職。退職金と預貯金を合わせた金融資産は約6,000万円ありました。持ち家はすでに完済。

 

「年金も夫婦で月25万円ほど入る見込みでしたし、正直、老後のお金は心配していなかったんです」

 

退職から2年後、佐藤さん夫妻はヨーロッパへの長期旅行を決断します。往復はビジネスクラス。現地では4つ星・5つ星クラスのホテルに泊まり、美術館巡りや現地ツアーを満喫しました。

 

「エコノミーで体を痛めるより、少し贅沢して楽に行こう、って。妻も『老後ぐらい贅沢したっていいよね?』と背中を押してくれました」

 

この旅行でかかった費用は、2人でおよそ350万円。その後も、年に1回は海外、国内旅行も含めると年間で200万円前後を旅行や趣味に使う生活が続きました。

 

変化が訪れたのは、退職から7年ほど経った頃です。

 

「通帳を見て、思わず声が出ました。『あれ、こんなに減ってたっけ?』と」

 

金融資産は、6,000万円から約3,200万円まで減っていました。大きな投資の失敗があったわけではありません。旅行、外食、車の買い替え、家のリフォーム――一つひとつは「老後の楽しみ」として納得していた支出の積み重ねでした。

 

さらに追い打ちをかけたのが、医療費です。佐藤さんは持病の悪化で通院が増え、妻も膝の手術を受けることに。高額療養費制度を利用しても、自己負担や差額ベッド代、通院交通費などで、年間の医療関連支出は想定を超えました。

 

「贅沢したこと自体を後悔しているわけじゃないんです。でも、“このペースで大丈夫だ”と疑わなかった自分が甘かった」

 

 

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