米ドルは下落リスクを試す状況が続く可能性大
米ドル/円は、7月にかけて一時111円台後半まで上昇したものの、その後110円を割れるまで急反落となったことで、今年1月の102円台から上昇してきたトレンドラインを大きく割れた形となりました(図表5参照)。このため、テクニカルには米ドルの下落リスクを試す状況が続きそうです。
そんな米ドル/円は、日米金利差と基本的に高い相関関係が続いてきました。この金利差の主役である米金利は、すでに見てきたように、さらなる低下余地は限られる可能性が高いように思います。
そういった見立てが正しければ、米ドル高のトレンドラインを割り込み、テクニカルには米ドル下落リスクが試される状況が続くものの、「米金利低下=米ドル安」も限定的にとどまる可能性が高いのではないでしょうか。
米ドル/円は、中期的な「立ち位置」再点検
最後に改めて米ドル/円の中期的な「立ち位置」について確認しましょう。米ドル/円は一時111円台後半まで上昇する中で、足元で106.5円程度の52週MAを「大きく」、「長く」上回りました(図表6参照)。このように、52週MAを本格的にブレークした動きは、これまでの経験からすると一時的ではなく、米ドル/円の上昇がトレンドとして展開している可能性が高いことを示すものです。
では、今回米ドル高のトレンドラインを割り込んできた米ドルの下落が、あくまで米ドル高トレンドが続くなかでの一時的な米ドル安に過ぎないなら、それはどんなシナリオになるのでしょうか?
比較的近いところでの代表的な米ドル高・円安トレンドは2011年から2015年にかけて約4年続いたものです。相場ですから、約4年の米ドル高トレンドでも一時的な米ドル安は何度かありましたが、それは52週MA前後までがせいぜいでした(図表6参照)。
以上を参考にすると、最近の米ドル安があくまで一時的な動きであるなら、52週MA前後までがせいぜいといった見通しになります。その52週MAは足元で106.5円程度なので、その意味では一時的な米ドル安なら最大でも106~107円程度でしょう。
110円程度の現在の水準から106~107円程度まで米ドルが下落するなら、比較的大幅な下落リスクがあると感じるかもしれません。軽微な米ドル安にとどまるのかどうかは米金利の低下次第といった考え方が基本でしょう。
吉田恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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