(※写真はイメージです/PIXTA)

相続は中高年だけの問題ではなく、未成年が相続人の立場になることも多々あります。未成年を含む遺産分割協議では、親も肩代わりが許されず、家庭裁判所への申し立てが必要になるケースもあるなど、煩瑣な手続きが求められますが、それにより未成年の相続権が厳密に守られているのです。相続問題の解決に定評がある、弁護士法人菰田総合法律事務所の國丸知宏弁護士が事例をもとに解説します。

相続権のない前妻は、子と「利益相反」しないので…

それでは、CとDについてはどうすべきか、考えてみましょう。以上のAとBの説明から、CとDについても、1人ずつ特別代理人を選ばなければいけないと考えるかもしれませんが、実はCとDはどちらか一方だけ特別代理人を付けてもらうよう申立てをすればいいのです。

 

なぜなら、CとDの親権者であるTは、Sと違い自身が相続人ではありませんので、CとDのうち、特別代理人がつかなかった方について、親権者として代わりに遺産分割協議に参加することができるのです。

 

例えば、Cに特別代理人がついたとします。Dの親権者としてTが遺産分割協議に参加したとして、Dの取り分を減らしたとしても、T自身の取り分が増えるわけではありませんので(Tはそもそも相続人ではないため取り分がないため)、DとTとは「利益相反」の関係にはない、というわけです。

 

今回の相談者Sさんは、AとBにそれぞれ特別代理人を付けるべく家庭裁判所に申立てをし、元妻のTさんは同じようにDに特別代理人を付けるべく家庭裁判所に申立てをしました。

 

特別代理人の選任申立は、未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。必要書類としては、申立書の他、親権者の戸籍謄本等のほか、どのような遺産分割をする予定かという、遺産分割協議書の案を添付することが必要になります。

 

結局、今回の相談者Sさんは、特別代理人を選任したうえ、遺産分割協議を成立させることができました。

 

未成年者が相続人になる場合には、ここで解説した特別代理人という制度を利用しなければならないことが多いのですが、その役割と仕組みを理解している方は多くありません。本稿を通じ、特別代理人について知っていただけたらと思います。

 

 

國丸 知宏

弁護士法人菰田総合法律事務所

弁護士

 

 

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