夫の急死で相続発生、「遺産分割」が必要になったが…
筆者の事務所にSさんという方が相談に見えました。
Sさん「先日、夫が仕事中に不慮の事故で亡くなりまして…」
筆者「それは…。大変お気の毒です」
Sさん「四十九日が終わり、相続手続きを考えなければと思ってご相談に伺いました」
筆者「なるほど。相続人について知りたいので、家族構成を教えてくださいますか?」
Sさん「夫と私との間には、2人の子(AとB)がいます」
筆者「では、相続人は配偶者であるSさんと、お子さん2人でしょうか?」
Sさん「じつは夫には離婚歴がありまして、元妻のTさんとの間に、2人の子(CとD)がいます」
筆者「でしたら、Tさんとの間のお子さんのCDも相続人になりますね。ちなみに、Sさんのお子さんのABと、Tさんのお子さんのCDは、成人されていますか?」
Sさん「それが、全員未成年なんです…」
Sさんの亡き夫には、元妻であるTさんとの間に2人(CとD)、Sさんとの間に2人のお子さん(AとB)がいることが明らかになりました。
この場合、Sさんの夫の相続人は、いまの妻とその間の子ABの2名、元妻との間の子CDの2名の、計5人ということになります。
Sさんの夫の遺産相続をするには、この5人で話し合いを行い、「遺産分割協議」をまとめる必要があります。
しかし、今回の事情で重要なのは、お子さんたちがいずれも未成年者であるという点です。
未成年者の法的行為に必要な「法定代理人」とは?
ここで、未成年者について少しご説明しましょう。
未成年者が法律上の行為をするには、その法定代理人の同意を得なければなりません。また、未成年者が同意なく行ってしまった法律上の行為については、取り消す(無かったことにする)ことができるとされています。法定代理人とは、親権者をイメージしていただければ大丈夫です。
この「法律上の行為」というものは、たとえば買物をする行為なども含まれますので、未成年者が親権者の同意なく買物(法的には売買契約に当たります)をした場合には、取り消すことができるとされています。
そのため一般的に、未成年者が法律上の行為を行う場合については、あとから取り消されてしまっては、契約の相手方もたまりませんので、最初から親権者の同意を得なければ契約に応じてくれない場合が多いのが実際です。
先ほどの例でお話した「買物」についても、たとえばスーパーでお菓子を少量買う程度であれば、スーパー側としても、「恐らく親権者の同意を得ているのだろう」「そんな少額の買い物を取り消す親権者はいないだろう」ということで、わざわざ買い物を禁止することはしないのが通常でしょう。他方、不動産の売買契約などのように高額の買物の場合には、あとで簡単に取り消されてはたまりませんから、通常、親権者の同意がない限りは契約してもらえません。
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