相続トラブル防止に、遺言書は非常に有効です。しかし、「遺留分」といった相続に関する基礎知識を持っていないと、本来の意図とは異なった財産の残し方をしてしまう可能性があります。最低限知っておきたいポイントについて、相続問題の解決に定評がある、弁護士法人菰田総合法律事務所の國丸知宏弁護士が事例をもとに解説します。

放蕩息子の長男ではなく、堅実な次男に財産を譲りたい

ある日、筆者が勤務する事務所に、Aさんという男性が相談にいらっしゃいました。妻に先立たれたAさんには2人の息子がおり、相続について悩んでいるということでした。

 

Aさん:「遺言書を作りたいのですが、少し困っていて……」

 

筆者:「どういった遺言書ですか?」

 

Aさん:「お話ししたように、私は妻に先立たれ、子が2人、長男と次男がおります。長男は大学卒業後定職に就かず、遊興費を賄うために借金を作っては首が回らなくなり、私たちに頻繁に援助を求めるような状況でした。他方、5つほど年の離れた次男は、そんな長男に振り回される両親の姿を不憫に思ったのか、全く正反対の性格で、安定した職について堅実に働き、私が定年して以降約20年にわたり、実家の近所に住んで夫婦ともども私たち両親の面倒を見てくれました」

 

筆者:「そうなのですね」

 

Aさん:「私たち夫婦は、遺産と呼べるようなたいそうな財産を持っている訳ではないのですが、それでも自宅の不動産のローンを返し終わり、定年までにコツコツ貯めた預貯金も少しばかりあります。私の死後、これを長男が相続することになると思いますが、そうなると折角の預貯金も簡単に使い果たされてしまうのではと心配で…。できれば、いまも1人暮らしの私の面倒を見てくれている次男に、自宅を含めすべての財産をあげたいと思っているのです」

 

筆者:「それでは、次男にすべてをお渡しする内容の遺言書を作られたいということですね」

 

Aさん:「はい、そうなんです。ただ、長男も自分が全くもらえず、弟に全財産がいくことが分かると、さすがに気分を害するのではと思って…。いまは兄弟の仲はなんだかんだ良好なのですが、今回の遺言書の内容次第では、兄弟仲が悪化するのでは、と思っていて、それが気掛かりなのです」

 

筆者:「なるほど、そういうことですね。確かにそのご心配はよく分かります。遺言書の内容がきっかけで揉めるという場合もよくありますからね」

 

Aさん:「やっぱりそうなんですね。そこで私もなんとかならないか考えまして。実はいま、死亡保険金の受け取れる生命保険への加入を検討しているのですが、その死亡保険金を長男が受け取れるようにしようかなと考えているのです。そうすれば、全くもらえないよりかは、長男も少しは気がおさまるのではないかと……」

 

筆者:「つまり、次男に全財産を相続させつつ、生命保険の死亡保険金を長男にお渡しされることで、兄弟間のバランスを取られたいということですね」

 

このような相談を受けることは、よくあります。

 

今回の相談者は、お金遣いの荒い長男に遺産を渡すのではなく、しっかり者の次男に遺産を渡したい。しかし、それでは兄弟仲が悪くなるかもしれないので、生命保険の死亡保険金を長男に渡すことで、それに配慮しようとしている、というケースでした。

 

こういったAさんの希望は、実際のところ実現するのでしょうか。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

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