兄から「亡き母の財産を使い込んだ」と疑われ、納得できない
今回の相談者は、50代の女性Aさんです。Aさんの母親が亡くなり、遺産分割について相談したいと、事務所にいらっしゃいました。
Aさんの父親は10年前に他界。そのため母親の相続人は、Aさんと、Aさんの兄の2人だけです。遺言書はありませんでした。
「母親の財産は自宅と預貯金です。ところが兄は〈預貯金が少ない。お前が金を使い込んだんだろう!〉といって聞きません…」
Aさんの母親の遺産は、次の通りです。
自宅土地・建物:2,000万円
預貯金:1,000万円
Aさんの兄の主張は、次の通りです。
「もっと預貯金があるはず」
「晩年の母親は認知症だった。金銭管理をしていたAさんが使い込んだに違いない!」
「預貯金の使い込みはしていない」と証明するには?
筆者がAさんに事情を確認したところ、Aさんは、元々実家の近くにマンションを購入して1人暮らしをしていましたが、10年前に父親が亡くなったのを契機に、母親が精神的に弱ってしまったため、平日はほぼ毎日仕事帰りに実家に顔を出し、一緒に夕食をとった後に帰宅。週末は実家に泊まって家事をしたり、母親の通院に付き添ったり、一緒に買い物に行ったりしていたそうです。
ここ3年ほどは母親が認知症になり、日常生活が困難になったため、Aさんは生活の拠点を完全に実家に移し、仕事も介護時短勤務に変更。ヘルパーと協力しながら介護をおこなっていたということでした。
「母が認知症になった3年前から、私が母の預貯金を管理していたのは事実です。しかし、自分のために母のお金を使ったことはありません」
Aさんは几帳面な方で、毎日日記をつけ、母親のための支出はすべてレシートをもらい、ノートに貼り付けて整理し、金額を記録していました。
主な支出の用途は、食費・医療費・光熱費・日用品・家電購入費・固定資産税・庭の剪定費用などが中心で、高額な出費としては、昨年、実家をバリアフリーに改装した際のリフォーム費用等がありました。
そこで筆者は、金融機関の取引履歴を取得の上、出金と、これに対応する領収書等を整理してまとめ、Aさんが母親の預貯金を使い込んでいないことの裏付けとして、兄に送付することにしました。
受け取った兄も、資料を確認した結果、Aさんが使い込みをしていないことを理解したようでした。