「家賃滞納は普通の人が堕ちる破滅への入り口である。」……2500件以上の家賃滞納トラブルを解決してきた、OAG司法書士法人代表の太田垣章子氏。同氏は書籍『家賃滞納という貧困』(ポプラ社)のなかで、その悲惨な実態を明かしている。
育ちのいい夫婦におとずれた「予想だにしない結果」
育ちのいいこの夫婦を見て、誰が「家賃滞納」を想像されるでしょうか。
強制執行の現場で、取り乱して泣き叫んでいらっしゃった理香さん。家にお客さんが来たと勘違いして、喜びながら執行官にまとわりつく小さなお嬢さん。この両極端な光景は、とても残酷で切ないものでした。
この後、この夫婦は離婚し、相馬さんは破産の手続きを取られました。あのまま大手の広告代理店で勤務していたら、こんなことにはならなかったのではと思います。あるいはもっと起業に準備の時間をかけていたら。
それよりも何よりも、正直に理香さんに会社のこと、資金繰りのことを伝えられていれば…。そこには騙そうという気持ちはなく、大切な理香さんを心配させたくないという思いやりの気持ちが、結果、夫婦を離婚に導いてしまいました。
人生にはたくさんの分岐点があって、誰しもが、その時できうる最善の選択をしているはずです。しかしその選択は、予想だにしない結果をつきつける可能性を秘めているということでしょう。すべてを「たら・れば」でいくら後悔しても、残念ながら、もう後戻りはできないのです。
※本記事で紹介されている事例はすべて、個人が特定されないよう変更を加えており、名前は仮名となっています。
太田垣 章子
OAG司法書士法人代表 司法書士
司法書士、賃貸不動産経営管理士、合同会社あなたの隣り代表社員
司法書士、賃貸不動産経営管理士、合同会社あなたの隣り代表社員。30歳で生後6か月の長男を抱えて離婚、働きながら6年の勉強を経て2001年に司法書士試験合格。2006年に独立、2012年に事務所を東京へ移転し、2024年5月よりコンサルティングと情報発信を軸に現職へ。家主側の訴訟代理人として家賃滞納の明け渡し手続きを延べ3,000件近く担当し、現場重視で滞納者の再出発にも伴走する“賃貸トラブル解決のパイオニア”として知られる。「住まいは生きる基盤」を掲げ、“人生100年時代における家族に頼らないおひとりさまの終活”を提言。全国賃貸住宅新聞での長期連載をはじめ、現代ビジネスなど各種媒体に寄稿し、年間60回超・累計700回超の講演で実務と制度の接点をわかりやすく伝えている。著書に『家賃滞納という貧困』、『老後に住める家がない!』、『不動産大異変』、『あなたが独りで倒れて困ること30』(すべてポプラ社)、『死に方のダンドリ』(共著、ポプラ社)などがある。
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