ブラジルレアル、足元の動向について (※写真はイメージです/PIXTA)

資源国という強みに加え、金融政策の引締め転換や、財政規律に取り組む姿勢を見せたことで、ブラジルレアルは回復傾向にありましたが、足元やや不安の芽が生まれました。直接的にはボルソナロ大統領も含めたワクチン汚職疑惑です。捜査はこれからで今後の展開を待つ必要がありますが、市場が懸念しているのは来年の大統領選挙への影響と思われます。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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ブラジルレアル:3月頃から上昇に転じたが、大統領のワクチン汚職疑惑で軟調に

ブラジルレアル(対ドル)は3月頃から上昇に転じていましたが、足元軟調です(図表1参照)。

 

日次、期間:2019年7月12日~2021年7月12日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ブラジルレアル(対ドル)と政策金利の推移 日次、期間:2019年7月12日~2021年7月12日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

レアルが足元売られた主な背景は、ボルソナロ大統領が新型コロナウイルスのワクチン輸入に関する汚職に関与した疑いが浮上したためです。

 

なお、12日のレアルは反発しました。背景はブラジル中央銀行の週次調査で、エコノミストの22年末政策金利予想が前回(休日があり6月28日)の6.75%から7%に引き上げ金融引締め姿勢強化が想定されたことなどによります。

どこに注目すべきか:ブラジル、ワクチン、不正疑惑、世論調査

資源国という強みに加え、金融政策の引締め転換や、財政規律に取り組む姿勢を見せたことで、ブラジルレアルは回復傾向にありましたが、足元やや不安の芽が生まれました。直接的にはボルソナロ大統領も含めたワクチン汚職疑惑です。捜査はこれからで今後の展開を待つ必要がありますが、市場が懸念しているのは来年の大統領選挙への影響と思われます(図表2参照)。

 

時点:2021年2月(左)、2021年7月(右、発表時点) 出所:ブラジル運輸連盟(CNT)のデータを参考にピクテ投信投資顧問作成

[図表2]ブラジルボルソナロ大統領の支持・不支持率 時点:2021年2月(左)、2021年7月(右、発表時点)
出所:ブラジル運輸連盟(CNT)のデータを参考にピクテ投信投資顧問作成

 

まず、新型コロナのワクチン疑惑を簡単に振り返ります。ブラジル政府はインド製ワクチン「コバクシン」を輸入する契約を結びましたが、書類に不備があったにもかかわらず、発注するよう政権内部から圧力があったなど疑惑が生じていました。6月25日には、ボルソナロ政権を支持する下院議員の1人が議会委員会で、この不正問題を大統領に警告していたと証言したため、ボルソナロ大統領自身もスキャンダルに巻き込まれる事態となりました。

 

あわててボルソナロ大統領は、6月29日に、保健省の物流管理担当責任者の解任を発表しました。また、地元の報道ではこの担当責任者が別のワクチン購入でも賄賂を受け取った疑いを指摘しています。

 

こうした中、7月月初にブラジルの最高裁判所はワクチン購入に関する不正疑惑への対応を巡り、過失の疑いでボルソナロ大統領の捜査を開始することを検察に許可しました。憲法が認める大統領の免責は一時的に制限されるということとなります。疑惑を知りながら対応しないのはおかしい、という判断と思われます。今後の展開は捜査次第ですが、仮に単なる怠慢であったとしても、政治的な影響は残りそうです。新型コロナへの対応の失敗もあり、ボルソナロ大統領の支持率は低下傾向です(図表2参照)。

 

大統領選挙は来年秋が予定されており、まだ先のことながら、調査会社Datafolhaなどで支持率をみると、ルラ元大統領が50%近い支持を集めています。ボルソナロ大統領への支持はその半分程度です。

 

なお、選挙まで時間があることから大統領の弾劾裁判も考えられます。同じ調査で弾劾裁判への支持を見ると54%となっています。国民からの支持はある程度あるようですが、弾劾裁判の開始となると下院議員3分の2の賛成が必要で、その可能性は低そうです。

 

ワクチン疑惑の展開は捜査を待つ必要はありますが、ブラジルの政治、もしくは大統領選挙に関心が高まるとレアルには逆風となりそうです。ワクチン不正疑惑は大統領選挙を巡る思惑を早めたとも見られます。しかし、3月以降のレアル高の要因であった財政規律は議会の役割が大きいと思われます。議会選挙も大統領選挙と同時期に行われる見込みですがまだ情勢は固まっていない面もあり、様子を見る時間もありそうです。

 

また、別のレアル高支援要因であった政策金利の引き上げは、市場でも当面レアル安を抑制すべく引き締めが想定されています。懸念される状況ながら、今後の動向を注意深く見守る姿勢もひとつの選択肢と思われます。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ブラジルレアル、足元の動向について』を参照)。

 

(2021年7月13日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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