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トルコ中央銀行:インフレ率が前年比で20%を超える中、4会合連続で利下げ
トルコ中央銀行は2021年12月16日、主要政策金利である1週間物レポ金利を市場予想通り1%下げ、年14%にすることを決定しました。利下げは4会合連続となります。
なお、トルコ中銀は声明で、1ポイントの(今回の)金利引き下げで利下げ可能な限られた余地の利用は完了したとの認識を示しました。また累計で5%になる最近の利下げ幅の効果を22年1-3月期を通じて監視することも表明しました。
どこに注目すべきか:トルコリラ安、異例の利下げ、トルコ中銀
当レポートのタイトルにあるように、トルコリラ安進行は終わりが見えない底抜けのような状況です(図表1参照)。リラ安の背景は、高水準のインフレに直面する他国が利上げ対応する中、真逆となる利下げを継続しています。利上げを嫌うエルドアン大統領の圧力が報道等で指摘されているように、政治的な問題が背景と見られます。
トルコでは通貨危機などと形容される局面が過去何度かありますが、主なものについて期間を固定し(12月~翌年12月)指数化により比較すると、今回のリラ安は底値が未だ見えない点で深刻な事態と見られます(図表1参照)。

指数は各起点=100としてリラの対ドルレートを指数化
過去の例を振り返ると、18年はインフレが進行する中(図表2参照)、トルコによる米国人牧師の拘束を受け経済制裁がとられたことから利下げ政策が実施されリラ安が進行しました。

[図表2]トルコのインフレ率(CPI)と外貨準備高(月次)推移 期間:2016年11月~2021年11月、CPIは前年比
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
より深刻な01年のケースでは対外借入に依存する経済モデルが破綻した結果と見られます。当時のトルコは財政を拡大する上でも銀行の対外借入を積極的に活用していました。当時の為替制度(段階的なリラ切り下げ)により外貨リスク管理がおろそかであったこともあり、財政の肩代わりをしていた銀行に潜在的なリスクが拡大し、最終的に危機に直面しました。この危機を支援した国際通貨基金(IMF)はトルコに財政緊縮を求めると共に、金融引締めなどを求め当時の政権はこれを受け入れました。
しかし翌年の選挙で引締め的な政策を甘んじて受け入れた政権は支持率が低下、現在の与党であるAKP(公正発展党)が02年11月の選挙で勝利しました。なお、エルドアン大統領は02年当時AKP党首で、以来、14年~17年の一時期を除いてAKPの党首となっています。
エルドアン氏の支持基盤を見ると、地域的にはトルコ内陸部の土地開発政策への期待が高いところに集中しています。金利を引き下げることへの支持が強いことがうかがえます。
トルコのインフレ率は22年前半にさらに上昇し、市場予想では25~30%程度を見込む声もあります。さすがにトルコ庶民の生活への影響は深刻です。選挙に訴える手もありますが、大統領並びに総選挙は23年6月までに実施予定とやや先の話です。インフレに対応すべき中央銀行ですが、過去2年半で3人もの中銀総裁が更迭されている現状では過大な期待は出来ませんが、(政治の圧力を受けずに)利上げをすることがリラ安抑制、インフレ低下に効果があると思われます。
現在のリラ安対応策は為替介入ですが、トルコ単独での介入に効果は期待されず、外貨準備高(グロス、ネットはさらに低い)を減少させるだけと思われます。
市場は疑心暗鬼ですが、トルコ中銀が述べた利下げ効果の見直しの結果、利上げ支持されるならリラ安に歯止めがかかるかもしれません。反対にリラ売却禁止など資本統制に向かうようであれば市場の混乱が悪化する恐れも考えられます。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更される場合があります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『トルコリラ、底抜け脱線』を参照)。
(2021年12月20日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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