不動産運用による収入は給与所得と損益通算が可能
皆さんのような高額納税者にとって不動産運用は非常に相性がいい。なぜなら不動産から得た収入は、勤務医としての給与所得と合算する「損益通算」してから確定申告できるからです。
これだけ聞くと当たり前のように思うかもしれませんが、株やFXで得た不労所得は損益通算できません。これらは給与とは別途に計算し、その額に応じて納税しなければならないのです。給与と合算できるのは、事業所得だけです。ここが株やFXと不動産運用の決定的に違うところです。
不動産は日本経済を左右する要です。だから国策として不動産に関する収益は税制上優遇されているのです。
事業所得は、家賃などで得た収入から減価償却費や金利といった費用を、事業損失として差し引いて計上することができます。減価償却とは、事業を行うにあたって必要な建物や高額な設備などの購入費を、一度に経費計上しないで何年かに分けるという考え方です。
建物などは大変高額なので、たとえば法人の場合は一度で経費計上してしまうと、その年の決算が大赤字になる可能性があります。また、このような建物や高額な設備は1年限りの消耗品ではなく数年にわたって使用できるものなので、使う年数に応じて小分けに計上するのが合理的とも言えるでしょう。国はそれぞれの物品に耐用年数を定めています。計上する金額は、購入金額をその年数で割ったものになります。
おもな物品の耐用年数は次のようになっています。
●鉄筋コンクリート(RC造)住宅 47年(病院用は39年)
●木造住宅 22年
●給排水、ガス設備 15年
●普通自動車 6年
●コピー機、テレビ 5年
●パソコン 4年
不動産運用を行えば、必要不可欠な建物やOA機器などの減価償却費を、勤務医としての収入から差し引いて確定申告できるのです。
減価償却費や金利、登記代、火災保険料も経費となる
では、高額納税者にとってなぜ損益通算できる不動産運用が向いているかを具体例で説明しましょう。図表を見てください。
【図表 損益通算による節税額の計算】
たとえば勤務医としての給与所得が年間1500万円だったとします。税率は所得税プラス住民税で43%ですから、納税額は645万円(納税額①。分かりやすくするために各控除は考慮しません)。
ここで1億円の物件を自己資金1000万円、銀行からの融資9000万円で購入します。物件を購入すると減価償却費や金利、登記代、火災保険料、リフォーム代などが経費として認められます。
減価償却費が約450万円、金利が約150万円、その他を合計すると約1200万円が経費となります。ただし、この物件は家賃収入が年間約1000万円あります。そこで経費から家賃収入を引きます。
1200万円(経費)-1000万円(家賃収入)=200万円(不動産運用年間損益③)
この200万円を給与所得から引く損益通算ができるのです。
1500万円(給与所得)-200万円(不動産運用損)=1300万円
すると納税額は次のようになります。
1300万円×43%=559万円(納税額②)
物件を持たないときの所得税が645万円ですから、不動産運用することで86万円の節税(④)が実現しました。
このように不動産運用は、高額納税者になればなるほど節税効果が期待できます。つまり「医師は負けにくい」のです。不動産運用は昔から「ミドルリスク・ミドルリターン」と言われています。ある程度まとまった資金が必要ですし、株やFXのように「1週間で3倍になった」といった大儲けは望めません。
しかし、医師に限っては常々「ローリスク・ミドルリターン」だと説明しています。なぜならここまで説明してきたように、レバレッジ効果が高い上に、節税効果が大きいからです。ちなみに節税の事務手続きは、勤務先が源泉徴収の年末調整をした後に、自分で確定申告をすることになります。