前回は、サ高住の推進につながる「地域包括ケアシステム」について説明しました。今回は、急速に進む高齢化や核家族化によってニーズが高まっている「サ高住」に、医師の力が必要とされている理由を見ていきます。

医師と施設の密接な連携が求められている「サ高住」

2012年の介護保険法の改正では、介護を行う人材とサービスの質の向上が厳しく求められるようになりました。

 

ご存じの通り、介護福祉士や一定の教育を受けた現場経験のある介護職員などは、これまで医師法で医師と看護師以外はできなかった、たんの吸引などの医療行為を行えるようになりました。具体的には次の医療行為になります。

 

●たんの吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部)

経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養)

 

今まで介護職員などのたんの吸引などは、緊急措置として一定の要件の下で運用されてきましたが、将来にわたってより安全な提供が行えるよう2012年に法制化されたのです。しかし、このような行為は高齢者の命に関わります。許可される介護福祉士などには制限が設けられ、一定の教育を受けることが義務付けられています。

 

厚生労働省は、サ高住などの施設では医療関係者との連携の下で、次のような体制の構築を求めています。

 

状態が急変した場合の医師等への連絡体制の整備等、緊急時に適切に対応できる体制を確保

対象者の状況に応じ、医師の指示を踏まえた喀痰吸引等の実施内容等を記載した計画書の作成

喀痰吸引等の実施状況を記載した報告書を作成し、医師に提出

対象者の心身の状況に関する情報を共有する等、介護職員と医師、看護職員との連携確保と適切な役割分担を構築

喀痰吸引等の実施に際し、医師の文書による指示を受けること

施設内連携体制の下、業務の手順等を記載した業務方法書の作成

医療関係者を含む委員会の設置とその他の安全確保のための体制の確保(ヒヤリ・ハット事例の蓄積および分析体制含む)

 

これを読むといかに密接な医師と施設の連携が求められているかが分かります。

 

国は手厚い補助金制度・税制優遇を設けている

一方で、手厚いバックアップとして、国はサービス付き高齢者住宅の建設・改修には補助金制度を設けています。

 

補助率は次のようになっています。

 

●新築の場合、工事費の10分の1(上限100万円/戸)

改修の場合は工事費の3分の1(上限100万円/戸)

デイサービスや診療所など、住宅部分ではない高齢者生活支援施設の合築・併設工事には10分の1(上限1000万円/施設)

改修には3分の1(上限1000万円/施設)の補助金が給付されます。

 

そして税制面での優遇措置もあります。

 

所得税・法人税の5年間割増償却40%

固定資産税5年間税額を3分の2に軽減

不動産取得税(家屋)が課税標準から1200万円控除/戸

不動産取得税(土地)が家屋の床面積の2倍にあたる土地面積相当分の価格等を減額

 

ほかにも国は、建設に対して住宅金融支援機構の長期固定金利の融資が利用できるなどの支援策で、サ高住の設立をバックアップしています。

 

このような医療・健康サービス付きの施設へのニーズは、今後急速に進む高齢化や核家族化によって、ますます増大していくでしょう。まさに社会に必要とされているのです。医師だからこそ実現できるこうしたサービスは、不動産の持つ潜在的価値を最大化させることで、周辺物件との差別化が図れ、同時に社会貢献にもつながります。

 

さらにサ高住のほかにも、シングルマザー向けシェアハウス、メディカルエステ、医食同源をアピールするヘルシーレストランなど、医師がオーナーであることがそのまま看板になる施設は無数に考えられます。

 

 

本連載は、2015年1月30日刊行の書籍『資産10億円を実現する医師のための収益物件活用術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

資産10億円を実現する 医師のための収益物件活用術

資産10億円を実現する 医師のための収益物件活用術

大山 一也

幻冬舎メディアコンサルティング

旧来の医療体制が瓦解し始めた今、医師たち一人ひとりに求められているのは勤め先の病院に頼らない、自らの開業をも見据えた確固たる基盤づくりであり、なかでも最も重要なのは資産形成である。資産形成にはさまざまな方法があ…

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