高齢者が5つのサービスを一括で受けられる支援体制
2012年にサ高住に係る介護保険法と老人福祉法の改正がありました。この改正でもっとも注目すべきは、「地域包括ケアシステム」の推進です。
地域包括ケアシステムはご存じの通り、介護が必要になった高齢者が住み慣れた自宅や地域で暮らし続けられるように「医療・介護・介護予防・生活支援・住まい」の5つのサービスを一括的に受けられる支援体制のことです。
65歳以上の人口は現在3000万人を超えており、国民の約4人に1人となっています。厚生労働省は、2042年にはピークを迎え約3900万人となり、その後も75歳以上の人口割合は増加し続けると推計しています。
約800万人の団塊の世代が75歳となる2025年以降は、国民の医療や介護の需要がより増えていくことは、容易に予想されます。そのため国は地域包括ケアシステムの推進を決定したわけです。
国は30分以内に必要なサービスが提供できる環境を目指していますが、スムーズな在宅介護を行うには、今のところ「高齢者向け住宅」が不足しています。たとえ大病を患っている高齢者でも在宅で暮らせるような住宅が求められています。
このような住宅では、利用者のニーズに合わせて適切なサービスを提供できること、さらに入院、退院、在宅医療といったように状況が変化しても利用者一人ひとりをよく理解したサービスが提供できることが重要になります。
今後の課題は、「医療・介護・介護予防・生活支援・住まい」の5つのサービスを円滑に提供できる体制づくりと医師や介護士など専門職とのスムーズな連携です。この課題がクリアされれば、入院した高齢者が早く退院し、住み慣れた自宅で生活できるようになるはずです。
医師が運営する質の高い「サ高住」が求められる時代に
地域包括ケアシステムの「医療・介護・介護予防・生活支援・住まい」の5つのサービスは、
①医療との連携強化
②介護サービスの充実
③予防の推進
④見守り、配食、買い物などの生活支援サービス
⑤高齢者にとって快適な住まいの整備
を指していますが、これは私からすれば、「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」の推進ともいえます。
同時によりレベルの高いサービスが求められていくとも理解できます。たとえば24時間対応の定期巡回、随時対応サービスなど、要介護高齢者の在宅生活を支援するため、昼夜を問わず訪問介護と訪問看護を連携させながらの対応を行う必要があります。
それには介護する側と看護する側、そして地域医療機関とのスムーズな連携が必須です。そう簡単なことではありませんが、その中心に皆さんのような医師の方々が、「サ高住」のオーナーとして指揮を執り、さらにデイサービスなどの介護施設を併設していくなどで、質の高いサービスを実現できる可能性は高くなるのではないでしょうか。
今のまま病院に長期入院する高齢者が増えれば、必要な治療を受けられない人が増えていく一方です。また、日常生活に支援や介護が必要な認知症高齢者も2010年の280万人から2025年には470万人と増加すると見られています。高齢者がたとえ認知症や慢性疾患となっても地域で暮らせる仕組みづくりは日本にとって必要不可欠でしょう。