「長男に全財産を」…弟と妹の悲痛な叫び
しかし、相続に関わる専門家としていわせていただけば、これはやってはいけない遺言のひとつです。なぜなら、法定相続人には、民法で最低限保障された遺産取得分「遺留分」があり、相続人には、法定相続分に1/2を乗じた額を受け取る権利を持っています。
今回のケースのように、相続財産を1人にすべて渡そうとすると、他の相続人は「遺留分侵害額請求権」を行使して、「遺留分」を受け取ることができます。遺留分を侵害された相続人は、それを取り戻す訴えを家庭裁判所に申し立てる権利があるのです。
こうなってしまうと、「争族」に発展しかねません。
案の定、Sさんが長女と次男に、将来、相続放棄してほしいことを話すと、両人とも表情を曇らせました。まず口を開いたのは次男です。
「これまで兄さんは、さんざん父さんと母さんに頼って生活してきたよね……。僕は必死に働いて、自力で住宅ローンを払っているのに……」
次に、長女が涙ぐみながら話し始めました。
「お金より、父さんと母さんがいつも兄さんしか眼中にないのが悲しい。私たちだって子どもなのに……私たちの将来はどうでもいいの?」
「兄さんもやがて歳を取る。財産放棄させられたうえ、老いた兄の面倒をみるなんて絶対に嫌」
いわれてみれば、確かにそうです。将来の相続計画は白紙に戻り、Sさん夫妻は頭を抱えました。
相続対策というと、つい「誰に何を相続させるか」「遺言書をどうするか」「相続税の節税対策として何ができるか」を考えがちです。しかし、実はその前にやらなければならないことがあります。それは、将来的に相続財産となる資産の洗い出しと「財産目録」の作成です。
これは手間のかかる作業です。不動産、宝飾品、美術品などの資産価値を把握するため、鑑定依頼すれば費用も掛かります。調査には時間と労力を要しますが、今はパソコンという便利な道具があります。表計算ソフトで財産目録を作れば、修正も簡単です。
遺言書を用意するためにも、資産の洗い出しは必要です。また、遺言書がなく、遺産分割協議を行う場合も、財産目録があるとないとでは大違いです。相続人は遺産分割協議に先立って全相続財産を確認しなければならないので、財産目録があれば相続人の負担は軽減されます。
資産の洗い出しを行うことで、Sさん夫妻は見落としていた重要なことに気づかされました。
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