お金を巡る争いは尽きないもの。家族や親族の話し合いでなんとかなる……わけもなく、岡野雄志税理士事務所のもとには、様々な嘆きの声が届きます。今回寄せられた相談は「元夫の慰謝料にまつわる課税トラブル」。※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

【衝撃実例!】税理士に寄せられた一つの相談

■慰謝料は非課税なのに税務署からの電話が…

 

Rさんのご主人は、業界では名の知られたアーティストでした。しかし、放浪癖があり、ふらりと出かけては何日も行方がわからないこともありました。結婚当初こそ、Rさんも創作活動や個展のためだろうと思っていましたが、次第に愛人の存在にも気づき始めていました。

 

それでも、Rさんが離婚を切り出さなかったのは、3人の子どもには父親が必要と考えたからです。また、Rさんは専業主婦で、ご主人は出奔先からも生活費はちゃんと送ってくれました。無名だったご主人を支えてきた「糟糠(そうこう)の妻」としての意地もあったかもしれません。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

しかし、末っ子の高校入学を機に、離婚を決意。ご主人がRさんへ6,500万円支払うのを条件に、婚姻解消することになりました。Rさんは、それを慰謝料と認識していました。長年の間、ご主人の不在に悩み、精神的苦痛を感じながら、ひとりで子育てしてきたからです。

 

やがて3人の子どもたちも無事に成長し、社会へ出たり、結婚したりで立派に自立。Rさんが、「さあ、これからおひとりさまの老後を楽しもう」というころに、1本の電話がかかってきました。

 

それは、税務署からの電話でした。

 

その電話で、Rさんは別れたご主人が旅先で亡くなったことを知りました。しかも、「妻と子どもたちにはすでに生前贈与している」という旨の遺言書を残していたというのです。

 

実は、ご主人は現金をRさんに渡したあと、またも行方をくらましていました。所在がつかめず、婚約解消はしたものの、離婚届にも判を押してもらえないままでした。令和3年度の税制改正で婚姻届や離婚届は押印不要となり、Rさんは最近になってやっと離婚届を提出したのです。

 

Rさんはあの6,500万円は慰謝料と認識していたので、税法上は非課税であるため、申告・納税していません。しかし、ご主人が亡くなる直前に離婚届が出されたため、税務署は相続税対策としての偽装離婚を疑い、贈与を指摘して贈与税の支払いを通告してきたのです。

 

Rさんは青ざめました。

 

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