(写真はイメージです/PIXTA)

お金を巡る争いは尽きないもの。家族や親族の話し合いでなんとかなる……わけもなく、岡野雄志税理士事務所のもとには、様々な嘆きの声が届きます。今回寄せられた相談は「引きこもり長男を抱えた両親の相続トラブル」。※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

「実家を売る」…引きこもり長男、衝撃の一言

まず、Sさん夫妻が考えを改めたのが、自宅を長男に相続させることです。これまでは、住む家さえあれば長男もなんとか暮らしていけると考え、自宅を相続させるつもりでした。しかし、将来、息子が1人暮らしするのに4LDKもの家が必要でしょうか? 今の3人暮らしでも広すぎます。

 

しかも、自宅はすでに築40年以上。木造家屋の寿命は30年といわれ、これまでにも何度かリフォームや修繕を繰り返してきました。息子が相続するころには、さらに老朽化が進むことでしょう。自分たちが元気なうちに自宅を売却し、転居しようと夫婦は決心しました。

 

今より狭い家に引っ越すなら、これまで集めてきた美術品、骨董品、家具調度も不要です。また、ご主人保有のゴルフ会員権も、最近は使用頻度が減っていました。これらの資産も売却し、生活に必要な現金や預貯金のみを残して、子どもたちを受取人とする保険に入ることにしました。

 

なぜ保険に入るかといえば、相続税には死亡保険金の非課税枠があるからです。生命保険や損害保険の死亡保険金は、被保険者、保険料の負担者、保険金の受取人が誰かによって、課税される税金が異なります。

 

被保険者・保険料の負担者=被相続人(財産を残して亡くなった方)

保険金の受取人=法定相続人

 

この場合、死亡保険金には相続税が課税されますが、以下の非課税限度額が適用できます。

 

500万円×法定相続人の数

 

また、死亡保険金は被相続人が特定の相続人を受取人に指名できます(特別な事由がない限り2親等以内)。そもそも、民法上は「みなし相続財産」という保険契約による受取人固有の財産とみなされるので、遺産分割協議書に記載の必要もありません。受取人は遺産分割協議を待たずに死亡保険金を受け取ることができます。

 

なお、相続財産とは相続税課税の対象となる資産のことで、例としては以下となります。

 

<プラスの相続財産>

■不動産(土地・建物)

■不動産上の権利(借地権など)

■現金・預貯金・有価証券・暗号資産

■その他の権利(ゴルフ会員権・リゾート会員権・著作権など)

■宝飾品・金・美術品・骨董品など

 

注意したいのは、借金などのマイナスの財産。債務として控除が認められていますが、控除の申告をしなければ、相続税が課税されてしまいます(基礎控除額以内の場合は申告不要です)。

 

<マイナスの相続財産>

■借金

■医療費や介護費などの未払金

 

また、名義預金(口座名義人と実際に預金した人が異なる預金)、被相続人の死亡前3年以内に生前贈与された財産にも相続税は課税されます。死亡直前に被相続人の預貯金口座から現金を引き出す時も要注意です。使途によっては相続税が課されます。

 

さて、財産目録を作成することで、今後の具体的な相続計画や相続税対策を考えることができた、Sさんご夫妻。あとは、長男が話し合いに応じ、転居に賛同してくれるかどうかです。ところが、意外にも長男は転居の提案に興味を示し、あっさりと話し合いに応じました。

 

しかも、驚いたことに、自分も今、少しずつ収入を得ているので両親とは別居または近居してもいいといい出したのです。どうやら長男は、自室にこもりながらネットビジネスを始め、多少の収入を得るようになっていたのでした。

 

Sさん夫妻は、長男が1人暮らしすることにはまだ不安を感じているようですが、いずれは長男にも1人になる日がやってきます。夫妻はシニア向けマンションを、長男はその近くにワンルームを探すことに決めたとのことです。

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

岡野 雄志

岡野雄志税理士事務所

 

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