本連載は、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)への取材レポートです。今回は、東京都心5区のオフィス空室率の動向をもとに、今後のJリート投資戦略を考えます。

Jリートの今後の見通しと投資戦略

今後のJリート(東証REIT指数)は、職場や大学でのワクチン接種の加速や東京オリンピック・パラリンピックの開催により、国内経済の正常化などが意識され、短期の調整を挟みながらも、コロナ禍で売られてきたホテル、商業施設リートへの資金流入(リターンリバーサルの動き)は継続すると予想。

 

一方、中期的(3ヵ月~6ヵ月)には、①NAV(純資産価値)倍率などバリュエーション面で上値余地が低下していることや、②FRB(米連邦準備理事会)によるテーパリング(量的緩和の縮小)観測の高まりから先行きの米長期金利に上昇圧力がかかりやすいこと(利回り商品としてのリートの魅力度が低下)に加え、③良好な需給要因が6月に剥落すること(2020年9月から全4回に渡るFTSEグローバル株式指数シリーズへの組み入れが6月で終了)や、④季節性で売りが出やすいこと(6月、7月は10月に次いで平均月間騰落率でマイナスになりやすい傾向があること)などから指数の上値が重くなることも予想される(参照:『短中期のJリート投資戦略…値動きのアノマリーをどう活かすか』)。

 

足元は2021年5月末時点のNAV(純資産価値:株式市場のPBRの1倍に相当)である約1820ポイントを上回る水準で推移している。2016年以降の過去平均であるNAV倍率(約1.12倍)を掛け合わせると2040ポイント程度となっており、足元の水準に割安感は見られない。

 

当面はNAVの水準が継続的に切り上がらない限り、ここからの上値追いの買いは見られにくいだろう。

 

また、6月16日、米投資ファンドのスターウッド・キャピタル・グループが、インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人(以下、インベスコ・オフィス)に実施していたTOB(株式公開買い付け)が成立しなかったと発表。

 

インベスコ・オフィスのグループ会社が、防衛を目的に価格を引き上げた対抗TOB案を提出したことで、スターウッド側は成立条件を満たすことができなかった。今回のスターウッド側の提案が成立すれば、Jリート初の敵対的TOB案件となり、今後も再編の動きが期待され、Jリートの割安さが是正されるとの見方もあった。

 

だが今回、不成立となったことで、そうした期待感は後退すると見られ、Jリートの上値を抑える要因にもなろう。

 

ポートフォリオ戦略では、利回り重視のコア部分(7~8割)は長期の保有継続も、キャピタルゲイン中心のサテライト部分(2~3割)は短中期の視点から商業施設やホテルリートの押し目買いを行う一方、オフィスリートに対しては売り上がりで対応し全体として中立に引き下げ、次の相場展開に臨みたい。

 

当面のアップサイドリスクは、国内のワクチン接種が加速し、オリンピック・パラリンピックに向け、一段とモメンタムが改善し海外投資家の資金流入が継続することが考えられる。一方、当面のダウンサイドリスクは、米国の物価や雇用関連の統計が強含み、FRBによるテーパリング観測が強まることなどを想定している。

 

中村 貴司

東海東京調査センター

投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)

 

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このレポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資判断の最終決定は、お客様自身の判断でなさるようお願いいたします。このレポートは、信頼できると考えられる情報に基づいて作成されていますが、東海東京調査センターおよび東海東京証券は、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。なお、このレポートに記載された意見は、作成日における判断です。

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