6月16日のFOMC(米連邦公開市場委員会)後、米ドルは全面高となりました。FX開始直後から第一線で活動している、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は「対円と対ユーロなどでは、米ドル高の進展に差が出た。米ドル/円は、FOMCの直後こそ米ドルが急騰したがすぐに反落、一方ユーロ/米ドルは、ユーロ安・米ドル高が一段と広がった」だと述べています。一体なぜなのでしょうか。今回は吉田氏が、先週の米ドル/円、ユーロ/米ドルの値動きの背景や、今後の展開を考察していきます。

「米2年債利回り」今後の見通しは?

ではその米2年債利回りはこの先どう動くのでしょうか。今年に入ってからの動きで見ると、先週の動きはいかにも「急騰」でしたが、昨年以降で見ると、昨年3月のコロナ・ショック前よりも、まだ低水準だといえます。図表5を見てみると、金利上昇の余地はまだまだありそうな印象です。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表5]米2年債利回りと90日MA (2020年1月~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

米2年債利回りを90日MA(移動平均線)からのかい離率にすると、2000年以降で見てもある程度の範囲内の変動になります。そして、先週のFOMC後の米2年債利回り急騰を受け、90日MAからのかい離率は、2000年以降では最高のプラス70%近くにまで拡大しました(図表6参照)。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表6]米2年債利回りの90日MAからのかい離率 (2000年~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

過去90日間の平均値からのかい離の拡大は、行き過ぎの可能性が拡大しているという意味になります。つまり足元の米2年債利回りは、90日MAからのかい離率で見ると、2000年以降で最も「上がり過ぎ」懸念が強くなっている可能性があるのです。

 

以上を少し整理してみましょう。先週のFOMCの後から、為替相場は米金融緩和見直しの織り込みがメイン・テーマになっており、金融政策を反映する米2年債利回りの影響が大きい状況が続く可能性があります。そして、米2年債利回りは、先週までに記録的な「上がり過ぎ」の可能性が出てきたので、その修正で米金融緩和見直しをテーマとした米ドル急騰も一息つくかもしれません。

ユーロ安・米ドル高が一段と広がった理由は…

さて、先週のFOMC後の米ドル全面高は、冒頭でも述べたように、対円と対ユーロなどで差が出ました。その一因はポジションの違いにもあるかもしれません。

 

ヘッジファンドなどの取引を反映するCFTC統計の投機筋のポジションでは、米ドルに対して円は売り越しであるのに対し、ユーロは買い越しとなっていました(図表7、8参照)。

 

 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表7]CFTC統計の投機筋の円ポジション (2020年1月~)出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表8]CFTC統計の投機筋のユーロ・ポジション (2020年1月~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

要するに、FOMC前に、米ドル/円は米ドル買い・円売りに、一方ユーロ/米ドルはユーロ買い・米ドル売りに傾斜していた可能性があるのです。この結果、米緩和見直し思惑に伴う米金利上昇に対しては、まずは売っていた米ドルの買い戻しから急ぐ必要のあるユーロ/米ドルの反応が大きくなったのだといえます。



 

吉田恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

 

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

 

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