「美容業界は、お金のトラブルはよくあるんです」
「それは調べるしかないですね」
彼は筆者の話を黙って聞いていたが、静かに言った。
「複数のスタッフが疑問を持っているようなら、それはかなり黒に近いとは思いますが……。でも、不審な点はきちんと調べて、証拠を示して、悪いことは悪い、とはっきりさせなければいけないです。僕は帳簿を確認します」
国生さんはため息まじりに続けた。
「美容業界は現場のスタッフがキャッシュを扱うので、お金のトラブルはよくあるんです」
「でも、それじゃ、人を信頼することが難しくなってきますよね」
「僕もずっと美容業界でやってきましたけど、美容室のオーナーはいつも人の問題で悩んでいますね」
筆者は頭を横に振って、呻(うめ)いた。
「僕は人と一緒になにかをつくりあげることに喜びを感じていたのに。お互いを信頼できなきゃそんなことは無理ですよ」
筆者はどうしても田中さんが不正をやっているなんて信じられなかった。2人で天国のような明るい美容室を作ろう、と言っていたのに。なぜ? どうして? どうしてこんなことに……。
国生さんはちらりと筆者を見て、それからもう一度ため息をついた。
「山下さんは、前を向いて進んでいける人ですけど、世の中にはそうでない人もいますから……」
「……」
「とにかく、まだ黒と決まったわけじゃないんですから。調べてみましょう。はっきりさせるのが大切なんです。こういうときにきちんと対応しようとしている姿勢を他のスタッフに示すのも大事ですから」
落ち込んでいる筆者を励ますように、国生さんは優しく声をかけてくれた。
本当に筆者は多くの人に巡り合えて、助けられてここまできた。国生さんとの、この巡り合いを作ってくれたツイッターに、筆者は心から感謝した。
株取引では「損切り」のタイミングが重要だが…
株取引で利益を出し続けるために大切なことは「損切り」のタイミングだ。きちんと自分のルールに従って損切りができるならまず大負けすることはない。株だけではない。事業もそうだ。アイデアが面白そうならばすぐにやってみる。その代わり、引くときにはどんなにそれまで資金をつぎ込んでいても躊躇なく引かなければならない。
でも人は「損切り」すべきではない。
筆者は、出会った当時の田中さんにこだわっていた。夢を共有できた戦友。苦労しながら天六店を軌道に乗せていったこと。2人で始めたCIEL。
でもそのときといまとでは、相場が、地合いが違うのかもしれない。どこからか、彼の夢と筆者の夢がすれ違っていった……。そのことに筆者は気づいていなかったのだろうか……?
6月以降、国生さんは収支の流れを確認して、そこに矛盾点をいくつか見つけていた。国生さんが新しく入ってきて、ちゃんと調べようとしているということがスタッフに伝わったのだろう。それまで不審に思いながら黙っていたスタッフが国生さんに新たな疑惑を話し始めた。
カット+カラーの予約をしていたお客様の入金がカラーだけになっている、という話の他に、店舗で頼んでいない薬剤が大量に入ったと思ったら、それを田中さんがそのままどこかに持っていったという声も聞こえてきた。
真相を確認するためには物証が必要になる。田中さんが会計しているときの音声を録音したり、防犯カメラの映像を確認したりした。
筆者は調査会社、いわゆる探偵に頼んで、田中さんの尾行調査をしてもらった。そして夕方他店に行くと言って出ていってそのままいなくなるという行為が、その後も続いていることが判明した。
あのとき素直に謝ってくれたのに……。悔しい、というより、悲しい。なぜ彼はそんなことをしたのか。田中さんと夢を共有できていると思っていたのはただの思い込みだったのか。
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