医師という職業に対する安定志向の高まり、私大医学部の学費値下げ(東京女子医科大学など、現時点では数校値上がりしている大学がある)などもあり、近年、医学部人気が高まっているという。従来からの医師家庭や富裕層にサラリーマン家庭が続々参戦し、全国の82医学部入試の難易度が上昇している。では、どうすれば難関の医学部を突破できるのか。わが子の育て方、接し方から入試対策までを明らかにする。本連載は小林公夫著『わが子を医学部に入れる』(祥伝社新書)から一部を抜粋し、新たな情報を加筆し再編集したものです。

地方医大の場合は自分が住む地域の知識も

大学によって異なる質問傾向

 

もちろん、奇をてらうものばかりでなく、普通の質問もなされます。

 

日本大学医学部で聞かれたのは、「自分の長所と短所、そして短所を改善するためにやっていること」という定番の質問です。Fさんは、明るくて明朗活発、友人も多くて交友関係も広いことを長所に挙げ、短所はひとつのことに固執する癖があること、そしてそれを改善するために、幅広くさまざまな意見に耳を傾けて、自分の思考が偏らないように心がけていると答えました。

 

「医者と患者の関係についてどう思うか?」という質問に対しては、考えていたテーマだったので、「お医者様」「患者様」と様づけをするのはおかしい、同一の目線でお互いが関われば良い、という持論を展開しました。

 

「患者様と呼ぶことに違和感があるの? デパートのお客様とは違う感覚なの?」と突っ込まれましたが、そこは「まだ医師ではないので、現時点ではよくわかりません。今後、入学して学ぶ過程での課題にしたいと思います」とかわしました。

 

面接官の後者の質問に関して付言すると、医療の場合はデパートのように、お客さんに物(財)を直接購入してもらいサービスを提供するのとは少々異なる、と答えればひとまずよかったのではないかと思います。医師は専門性が高い職業ですが、現在は患者と協調しながら一緒に治療の方向性を形成して行くというあり方が主流です。又、扱う対象が患者の生命と健康です。提供するのは物ではなく、医療です。その点の違いを述べれば、面接官も納得したのではないでしょうか。

 

広島大学医学部では、4分間の自己PRのあと、高校時代の委員会について聞かれました。Fさんが自己PRで12年間バイオリンを続けていることを告げると、面接官も30年間バイオリンをやっている、と音楽の話で盛り上がったそうです。それ以外には、住んでいる川崎市の名物(食べもの)を聞かれるなど、世間話のような展開になりました。

 

地方大学の二次試験では、首都圏の大学とは違った箇所に興味を持たれ、ごくありふれた、ありきたりなことを聞かれることも多いようです。面接をあまり重視していないケースもありますが、自分自身が住む土地や環境について認識しておくことは、基本的な姿勢だと思います。

 

小林 公夫
作家 医事法学者

 

 

わが子を医学部に入れる

わが子を医学部に入れる

小林 公夫

祥伝社

近年、医学部志願者が急増しています。その要因として、医師という職業に対する安定志向の高まり、私大医学部の学費値下げなどがあげられます。これにより、従来からの医師家庭や富裕層にサラリーマン家庭が参戦。全国の82医学…

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