医師という職業に対する安定志向の高まり、私大医学部の学費値下げ(東京女子医科大学など、現時点では数校値上がりしている大学がある)などもあり、近年、医学部人気が高まっているという。従来からの医師家庭や富裕層にサラリーマン家庭が続々参戦し、全国の82医学部入試の難易度が上昇している。では、どうすれば難関の医学部を突破できるのか。わが子の育て方、接し方から入試対策までを明らかにする。本連載は小林公夫著『わが子を医学部に入れる』(祥伝社新書)から一部を抜粋し、新たな情報を加筆し再編集したものです。

集団面接でおたがいの長所を言ってください

一方、Fさんが受験した愛知医科大学では、2枚の写真を見てどう思うかを問う心理検査のような試験が実施されました。

 

1枚は、中学生くらいの子どもが髪の毛をかきむしり、手をグーの形にして鉛筆を握りしめ、歯軋りをしている写真。もう1枚は、その子どもの父親が嫌な顔をして両方の手のひらを前に突き出し何かを拒絶しているような写真でした。問いは「これを見て、学生時代について、また家庭がどういう状況にあるかを語ってください」というものでした。

 

「自分自身の」とは言われなかったので、Fさんは一般的なことを客観的に答えました。

 

「思春期は多感な時期であり、この子どものように、勉強、恋愛、部活の上下関係、などの様々な葛藤を抱えていることがある。父親に関しては、思春期の子どもは反抗的で手に負えないこともあり、父親がこんな表情になることもあるのではないかと思います。こういう場合はお互いが歩み寄り話しあうことが大切だと思います」

 

質問内容の学生時代について、私は、大学側は自分自身のことを語ってもらいたかったのでは、と考えましたが、Fさんはあとの質問である「家庭の状況について」という部分で、うまくフォローアップできたようです。Fさんの弟は一時期、引きこもりで大変だった時期があり、この子どもの家庭も同様ではないかと想像したのです。

 

つまり、受験とか何かプレッシャーのかかる状況がこの家庭には渦巻いているのではないか、ということを話したわけです。

 

他に聞かれたのは、「長い浪人生活の中で友人から遊ぼうと誘われた時はどうしていたか?」という質問です。同級生は大学生になって遊んでいる時期なので、Fさんも流されて遊ぶこともあったのではないか、とかなり突っ込んで聞かれたようです。

 

この質問については「この1年は遊びの誘いはすべて断わっていた」と答えたそうです。面接は、くだけた雰囲気で質問されていましたが、Fさんは気をひきしめて答えました。リラックスして、へたな受け答えをしていたら減点されていたかもしれないと、あとで思ったそうです。

 

さまざまな質問をされたようですが、Fさんの印象に残っている質問に、「医学生と普通の大学生の違いについて思うことは?」という質問がありました。これには、「医学生は専門性が高く解剖する特権もあるので、普通の学生とは違う責任感がともないます」と答えました。なかなか高度な答えですが、医学生は一般の大学生のように4年制ではないし、就職に際しても様々な企業を受験するなどの就職活動もしません。いわば入学試験と就職試験が同時に行われている感じで、その点も異なると言えるでしょう。

 

一風変わっていたのは、北里大医学部の集団面接です。これは2人一組で行われました。各人が医師の志望理由と大学の志望理由を述べ、各々いくつか質問がなされたあと、最後におたがいの長所をそれぞれ言い合ってください、と言われ、受験生をドキリとさせたそうです。受験会場で知り合ったばかりの相手をほめろというのですから、短い時間内に相手をよく観察していないと論評はできません。なかなか風変わりな難しい面接です。

 

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わが子を医学部に入れる

わが子を医学部に入れる

小林 公夫

祥伝社

近年、医学部志願者が急増しています。その要因として、医師という職業に対する安定志向の高まり、私大医学部の学費値下げなどがあげられます。これにより、従来からの医師家庭や富裕層にサラリーマン家庭が参戦。全国の82医学…

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