私立に特化した対策を取ることが賢明か
国公立と私立の併願か、単願か?
私立医学部の入試問題には独特の傾向があり、私立と国公立を併願するのはかなり難しいと言えます。
もちろん、抜群に実力があって、国公立上位校を受ける人は、私立にも合格するでしょう。しかし、国公立と私立の両方の対策を取ることは能力的にも勉強量としても厳しい。このケースで、私立に進学する余裕があるならば、私立に特化した対策を取ることが賢明かもしれません。
特殊な私立医学部入試や旧帝大のハイレベルな入試に比べると、通常、国公立医学部の二次試験は一般的・標準的な問題が出題されます。なぜなら、国公立大は、医学部以外の受験生も同じ問題で受験するケースが多いからです。たとえば、医学部と教育学部の受験生が同じ問題を解くケースもあり、総合的な問題とならざるを得ないのです。
そのため、きわめて基本的な問題も出題されることになります。ただし、基本的な問題だけに、医学部受験生の得点は高得点になり、かなりハイレベルな領域で1点、2点を争う戦いになります。
とはいえ、同じ国公立医学部でも、単科医科大の入試は特殊です。私立医学部に近いと思ったほうがいいでしょう。
東京医科歯科大、防衛医大、奈良県立医科大、京都府立医科大、旭川医科大、滋賀医科大、浜松医科大といった単科医科大は、数学や理科が非常に難しいことで知られています。
国公立医学部の入試傾向
国公立医学部は二次試験もさることながら、その前にセンター試験(現在、大学入学共通テスト、以下同)があります。センター試験対策についても簡単に述べておきましょう。
英語は、二次試験を突破できる実力がついていれば、センター試験にも十分に対応できます。逆に数学は、二次試験を突破できる実力があっても、センター試験では時間切れで力を発揮できないという悲劇が起こります。そのため、いかに効率よく短時間で解くかのテクニックが要求されます。
たとえば、積分の6分の1公式「 |a| /6(β-α)3」(3乗)が使えないような問題が出題されます。ベクトルの問題で、チェバの定理、メネラウスの定理などを記述するような問題も、センター試験では記述の必要がないため、面積として考えて、比を出してしまう工夫も必要です。
こういった問題では、あとで「この三角形の比は何対何か」と聞かれることも多く、二次試験では使わないような訓練も事前にしておけば、時間を上手に使うことができます。こういった対策を、横浜市立大学医学部医学科に進んだ教え子は『センター試験必勝マニュアル』(東京出版)で学んだそうです。使えない技もありますが、そこは取捨選択をしたようです。