5月の米雇用統計発表を受け、米ドル/円は、一時は110円を上回っていたものの、非農業部門雇用者数(NFP)のネガティブサプライズにより110円を割れ反落しました。FX開始直後から第一線で活動している、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は「ネガティブ・サプライズを受けて米ドル/円が下落、つまり景気指標と為替の関係において教科書通りの動きをしていることに注目すべき」だと述べています。今回は吉田氏が、米金利や米ドル/円の今後の展開について考察します。

「6/8~6/13のFX投資戦略」のポイント

[ポイント]​

・過去2ヵ月、「NFP予想比」に対する結果が示す一般的な方向と米金利が逆に動いていたが、今月は「NFPのネガティブ・サプライズで米金利が低下する」といった教科書通りの展開となった。米金利の「上がり過ぎ」が是正された影響が大きいのではないか。
・「上がり過ぎ」が是正されたことで、コロナ・ショック後の米景気回復については、米金利上昇=米ドル高のように、素直に反応しやすくなる可能性大。

 

米ドル/円上昇本格化(画像はイメージです/PIXTA)
米金利の「上がり過ぎ」是正…為替相場への影響は?(画像はイメージです/PIXTA

NFP(非農業部門雇用者数)と米ドル/円の関係は…

先週の米ドル/円は、一時110円を大きく超えたものの、金曜日に発表された5月米雇用統計において、注目されたNFP(非農業部門雇用者数)が、事前予想を下回る結果になったことがきっかけとなり、結果的に110円を割れ反落となりました。

 

先月は、NFPが今回以上にネガティブ・サプライズ(予想を大きく下回ること)となりましたが、米ドル/円はその後底固い展開が続いていました。また、先々月のNFPはポジティブ・サプライズ(予想を大きく上回ること)となり、その後米ドル/円は下落に向かっています(図表1参照)。

 

 

出所:マネックス証券「経済指標カレンダー」
[図表1]米ドル/円と日米金利差 (2021年1月~) 出所:マネックス証券「経済指標カレンダー」

 

以上のように、最近の米ドル/円は、「NFPが予想より悪い結果なら下落、予想より良い結果なら上昇」という、一般的に予想される方向とは逆に動いていました。その意味では、今回のネガティブ・サプライズを受けて米ドル/円が下落、つまり景気指標と為替の関係において「教科書通り」の動きをしていることに、注目する必要があるのです。

「米金利が逆方向に動いた」という事実が重要

これまで述べてきたように、この数ヵ月は、注目イベントである米雇用統計発表、そのなかでもとくに注目されるNFPの予想比の結果に対して、米ドル/円などは一般的に予想される方向と逆に動いていました。

 

ここで重要なのは、NFPの結果に対して、米ドル/円など為替相場だけでなく、米金利が一般的に予想される結果と逆方向に動いた事実です。そして、米ドル/円は今年に入ってから、米金利を主役とした日米金利差と、高い相関関係が続いてきました(図表2参照)。

 

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成)
[図表2]米ドル/円の日足チャートの推移 (2021年1月~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

以上のように見ると、問題の本質は、なぜ米金利はNFPの「サプライズ」が示す一般的な方向と逆に動いていたのか、ということです。その手掛かりのひとつに、米金利の「上がり過ぎ」度合いの違いがあります。

 

先々月、4月初めの米雇用統計の発表前、米10年債利回りの90日MA(移動平均線)からのかい離率は、空前の「上がり過ぎ」の可能性を示していました(図表3参照)。

 

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