5月の米雇用統計発表を受け、米ドル/円は、一時は110円を上回っていたものの、非農業部門雇用者数(NFP)のネガティブサプライズにより110円を割れ反落しました。FX開始直後から第一線で活動している、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は「ネガティブ・サプライズを受けて米ドル/円が下落、つまり景気指標と為替の関係において教科書通りの動きをしていることに注目すべき」だと述べています。今回は吉田氏が、米金利や米ドル/円の今後の展開について考察します。

 

以上のように見ると、ここで発表されたNFPがポジティブ・サプライズとなったものの、米金利はその後逆に低下に向かったのは、上述のようにすでに「上がり過ぎ」だったことから、ポジティブ・サプライズへの金利上昇の反応も限られ、むしろ「行き過ぎ」修正で下落に向かったということになります。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表3]米10年債利回りと90日MA (2021年1月~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

「米ドル/円上昇が本格再開する」といえるワケ

4月以降の米金利の頭打ち、低下傾向を受けて、90日MAからのかい離率で見ると、米金利の「上がり過ぎ」も修正が進んでいます。すでに米金利は極端な「上がり過ぎ」ではなくなっているのです。

 

そんななか、先月の米雇用統計発表は、NFPのネガティブ・サプライズという結果となりました。それでも、米金利低下が限られたのは、90日MAからのかい離率で見た場合、上述のようにすでに米金利の「上がり過ぎ」が是正されていたことが一因でしょう(図表4参照)。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表4]米10年債利回りの90日MAからのかい離率 (2010年~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

そんな米金利、米10年債利回りは、先週金曜日の米雇用統計発表をきっかけに、ほぼ90日MA(4日現在、1.56%)まで低下しました。これにより、90日MAとの関係でいえば「上がり過ぎ」は是正され、ほぼニュートラル(中立)に戻ったのです。

 

「行き過ぎ」が是正され、米金利がほぼニュートラルな状況に戻ったことから、米景気指標の予想比の結果に対して教科書通りの反応、つまりNFPが予想より悪かったことを受けて、米金利が低下し米ドルが売られたのでしょう。「上がり過ぎ」が是正され、米金利上昇が本格再開する環境が整ってきたのです。

 

4月以降、米景気指標は予想以上に改善する結果が増えてきましたが、それに対して米金利が上げ渋る展開となったのは、3月までの米金利急騰により、短期的な「上がり過ぎ」懸念が強くなっていたことが主因だったといえます。

 

「上がり過ぎ」が是正されたことで、米金利はコロナ・ショック後の景気回復に、金利上昇という形で素直に反応しやすくなっているのです。そんな米金利と米ドル/円は基本的に連動してきたため、米金利上昇に連れる形で、米ドル/円も上昇が本格再開しやすくなっています。
 



 

吉田恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

 

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

 

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