以上のように見ると、ここで発表されたNFPがポジティブ・サプライズとなったものの、米金利はその後逆に低下に向かったのは、上述のようにすでに「上がり過ぎ」だったことから、ポジティブ・サプライズへの金利上昇の反応も限られ、むしろ「行き過ぎ」修正で下落に向かったということになります。
「米ドル/円上昇が本格再開する」といえるワケ
4月以降の米金利の頭打ち、低下傾向を受けて、90日MAからのかい離率で見ると、米金利の「上がり過ぎ」も修正が進んでいます。すでに米金利は極端な「上がり過ぎ」ではなくなっているのです。
そんななか、先月の米雇用統計発表は、NFPのネガティブ・サプライズという結果となりました。それでも、米金利低下が限られたのは、90日MAからのかい離率で見た場合、上述のようにすでに米金利の「上がり過ぎ」が是正されていたことが一因でしょう(図表4参照)。
そんな米金利、米10年債利回りは、先週金曜日の米雇用統計発表をきっかけに、ほぼ90日MA(4日現在、1.56%)まで低下しました。これにより、90日MAとの関係でいえば「上がり過ぎ」は是正され、ほぼニュートラル(中立)に戻ったのです。
「行き過ぎ」が是正され、米金利がほぼニュートラルな状況に戻ったことから、米景気指標の予想比の結果に対して教科書通りの反応、つまりNFPが予想より悪かったことを受けて、米金利が低下し米ドルが売られたのでしょう。「上がり過ぎ」が是正され、米金利上昇が本格再開する環境が整ってきたのです。
4月以降、米景気指標は予想以上に改善する結果が増えてきましたが、それに対して米金利が上げ渋る展開となったのは、3月までの米金利急騰により、短期的な「上がり過ぎ」懸念が強くなっていたことが主因だったといえます。
「上がり過ぎ」が是正されたことで、米金利はコロナ・ショック後の景気回復に、金利上昇という形で素直に反応しやすくなっているのです。そんな米金利と米ドル/円は基本的に連動してきたため、米金利上昇に連れる形で、米ドル/円も上昇が本格再開しやすくなっています。
吉田恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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