2020年、新型コロナの感染拡大で世界の自動車産業も大きな打撃を受けたが、トヨタ自動車は2021年3月期の連結決算は、売上高27兆円、純利益は2超2452億円と急回復させた。コロナ禍で拍車がかかった「実店舗からオンライン販売へ」の流れは自動車産業にも影響を与えている。アメリカ、インド、中国などでオンライン販売が開始。自動車販売は大きな変化を迎えている。本連載は野地秩嘉著『トヨタの危機管理 どんな時代でも「黒字化」できる底力』(プレジデント社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

産業によって状況が大きく異なる「コロナ不況」

コロナ禍のなかの経済状況だが、不振なのは航空会社、ホテルといった旅行関連、JRや私鉄などの公共交通機関、飲食店など外食産業、スポーツ、エンターテインメントなどのイベント事業などである。また、在宅勤務の影響で印刷需要が落ちている紙パルプ、事務機などもまだ回復していない。

 

一方、通信、通信機器、通信機器やゲームなどに使われる電子部品などは新型コロナ危機の最中でも好調だった。加えて、在宅勤務の家庭へモノを届ける宅配便に代表される物流業も業績は伸びている。

 

こうしてみると、全産業が等しく厳しい状況にあるわけではないとわかる。それなのに体感では不況と感じている人が少なくない。それはやはりコロナ以前とは町の情景がすっかり変わったからだろう。

 

町から外国人観光客の姿が消えた。夜間の繁華街は寂しくなった。これまで行列が絶えなかった店の前から人の姿がなくなった。ニュースを見れば人の少ない空港や客が減った旅館の話題ばかりが映る。そして、コンサートやスポーツイベントが延期になったり、無観客での開催になってしまった…。

 

一般の人間にとってはコロナ禍で気分が沈んでいることもあって、自動車販売が回復していることや電子部品メーカーが好調に推移していることなどは感覚的につかめないのである。

 

だが、コロナ禍の現実とはこういうものだ。

 

身の回りの生活圏にある店舗が苦しんでいる姿は見える。テレビやニュースが取り上げる苦境の様子もわかる。けれども、実体経済を支えるさまざまな産業分野のデータまで調べる人はまずいない。

 

今回の不況は産業によって影響が異なっている。パッチワークのような不況と言える。

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トヨタの危機管理 どんな時代でも「黒字化」できる底力

トヨタの危機管理 どんな時代でも「黒字化」できる底力

野地 秩嘉

プレジデント社

コロナ禍でもトヨタが「最速復活」できた理由とは? 新型コロナの蔓延で自動車産業も大きな打撃を受けた―。 ほぼすべての自動車メーカーが巨額赤字となる中、トヨタは当然のように1588億円の黒字を達成。 しかも、2021…

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