2020年、新型コロナの感染拡大で世界の自動車産業も大きな打撃を受けたが、トヨタ自動車は2021年3月期の連結決算は、売上高27兆円、純利益は2超2452億円と急回復させた。コロナ禍で拍車がかかった「実店舗からオンライン販売へ」の流れは自動車産業にも影響を与えている。アメリカ、インド、中国などでオンライン販売が開始。自動車販売は大きな変化を迎えている。本連載は野地秩嘉著『トヨタの危機管理 どんな時代でも「黒字化」できる底力』(プレジデント社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

自動車産業は日本を含むアジア・アメリカでは回復

トヨタの数字を見ると、販売に影響が出たのは2020年4月から6月期だけだったことがわかる。7月からは中国とアメリカ、日本でも回復している。

 

生産現場と物流部門が部品をつなげて完成車を作ったために販売は元に戻った。それを考えると販売の危機管理は、生産現場の結果を把握して、いち早く完成車をユーザーの手元に届けることだったと言えよう。

 

コロナ禍であってもプライベートカーの需要はある。そして、需要に対して魅力的な商品を出してさえいればユーザーは買うという。(※写真はイメージです/PIXTA)
コロナ禍であってもプライベートカーの需要はある。そして、その需要に対して魅力的な商品を出してさえいればユーザーは買うという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

トヨタの車が売れているのは新型ヤリス(2月発売)、新型ハリアー(6月発売)などの新型車が出たこと、RAV4などのSUVに人気車種があることといったのが大きな要因だ。

 

まだ危機のなかにいるが、プライベートカーの需要はある。そして、需要に対して魅力的な商品を出してさえいればユーザーは買う。

 

販売の危機管理について取材してみると、トヨタ販売店に関する限り、濃淡はあるけれど、売れる商品を持っているため、どこも受注残がある状態だ。危機管理というよりも、いつもと同じように働いているとしか言いようがない。

 

自動車販売が回復していることに加えて、車周りの産業でもヒット商品がある。自動車用品店へ行けばドライブレコーダーが売れている。自動車保険ではドライブレコーダーと連動した保険、運転挙動(運転の仕方)と関連したコネクティッドカー用の保険に人気が集まっている。

 

どちらもコロナ危機の影響とそれほど関係はなく、あおり運転、そして、高齢者のアクセルの踏み間違い事故への恐れからユーザーが関心を持つ商品だ。

 

こうしたデータを合わせて考えると、自動車産業は日本を含むアジアでは回復している。一方、ヨーロッパではまだ停滞が続いている。そして、アメリカではスバルなどの数字を見る限り、コロナ禍であっても需要は落ちていない。

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トヨタの危機管理 どんな時代でも「黒字化」できる底力

トヨタの危機管理 どんな時代でも「黒字化」できる底力

野地 秩嘉

プレジデント社

コロナ禍でもトヨタが「最速復活」できた理由とは? 新型コロナの蔓延で自動車産業も大きな打撃を受けた―。 ほぼすべての自動車メーカーが巨額赤字となる中、トヨタは当然のように1588億円の黒字を達成。 しかも、2021…

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