多くの人が「衰退産業」との認識を持っていた、きもの業界。縮小していく市場を目の当たりにしながら、それでも可能性を探し、試行錯誤していた女性経営者がいました。きもの業界ではこれまで重視されてこなかった「ユーザーの快適性」について向き合い、地道な努力を積み重ねた結果、きもの用肌着「満点スリップ」を開発します。そしてこれが「きもの業界」に一石を投じる大ヒット商品となるのです。

面白がってくれる仲間の登場で「思い」は「形」へ

こうした「一緒に面白がってくれる仲間」を見つけられると、思いは一気に形へと変わります。新しい商品を生み出すためには幾通りもの試作品をつくらなければなりませんが、一緒に面白がってくれる工場なら、ともに試行錯誤をしてくれるでしょう。また、プロフェッショナルの立場から、商品の縫い方など改善アイデアを出してくれる可能性もあります。

 

いま振り返って考えてみれば、そうした工場を見つけるためには、情報発信と情報収集が大切でした。

 

筆者は普段から、「こんな商品をつくりたいんだよね。〇〇について誰か手伝ってくれる人はいないかな?」と誰彼構わず言って歩いています。本当に、相手構わずなのです。そうしているとひょんなところでひょんな人に出会ったり、面白いようにつながってくるのです。

 

ブログやSNSで探りを入れてみたり、そこでつながった人たちにメッセージを入れたりすることもしばしば。また、インターネットで検索して見つけた会社にメールを送りまくるのです。

 

こんなものをつくりたいが協力してもらえないかと。変な人だとか、怪しいとか思われることもあるのでしょう。返信が来ないこともしばしば、即答で断られることだらけですが、時折親身になってくれる先と出会います。この乱暴なやり方でどれだけすばらしい出会いがあったことか。

 

「この人に頼めば、商品づくりに協力してくれそうだ」と想像できる人だけに連絡をすると、予想外のつながりは得られません。だから、未知のものとの出会いを楽しむモードで情報発信をしまくるのです。これをやっていなかったら、ものづくりの人脈は広がらなかったでしょう。そして筆者の会社の商品は、いまの半分も開発できなかったかもしれません。

 

しかし、アイデアを思いつくだけでは、ヒット商品を生むことはできません。アイデアを試作品に落とし込み、さらに、何度も検証したのちに改良を加えて質を高める。そのプロセスをギリギリまで追求することで、初めてお客さまのお眼鏡にかなう商品を生み出せるのです。

 

ですから、何か商品に関するアイデアがあるなら、どんどん発信しましょう。権利を守りたい商品の場合は、先に特許申請を終えてから発信を始めてください。そうすることで、思わぬところから協力者が得られる可能性があります。

 

また、経営者自身が外に出て人と出会うことや、知名度を高めることも、仲間を集めるためには有効です。ものづくりをするためには、業界内外の人・企業と協力する必要がありますが、このとき、経営者の知名度が高く、かつ、人柄や実現したいことを相手に理解されているほど、コラボレーションはスムーズに進むと思います。メディアの取材を受けたり公演活動を行ったりして自分の存在をアピールすることは、意味のあることではないかと思います。

「面白いことをやりたい人」を集める秘訣とは?

そしてもう一つ強調したいのが、自分自身が仕事を存分に楽しむことです。いつもぶすっとして働いている人と、一緒に仕事をしたいとは思いませんよね。ですから、面白がってくれる仲間を集めたいなら、あなた自身が仕事を面白がることが不可欠なのです。

 

もちろん、仕事にはつらいことがたくさんあります。ときには、砂を噛むような思いをすることもあるでしょう。しかし、お客さまを喜ばせたり世の中をよりよく変えたりすることに楽しみを見いだしましょう。そのためには、ポジティブ思考やいい意味の脳天気さ、サービス精神、そして新しいものへの好奇心が大切だと筆者は考えています。

 

まずは仕事を楽しむこと。そして、自分たちが面白いことをやっていると情報発信すること。そうすれば、「面白いことをやりたい」と考えている人々が自然と集まってくるのです。

 

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衰退産業でヒット商品を生み出す4つの法則

衰退産業でヒット商品を生み出す4つの法則

髙橋 和江

幻冬舎MC

旧態依然としたきもの業界で、赤字経営から脱却。年10%以上のペースで売り上げを伸ばしてきた社長が解説。 古い業界だからこそ風穴は開けられる! 市場縮小が進む業界の状況を打破し、東日本大震災に見舞われながらも、ひ…

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