ダメな試作品でも、絶対につくったほうがいい
満点スリップの開発時には、3段階、20枚ずつの試作品をつくりました。いまに比べれば、ものすごく少ない回数です。いまは自社工場がありますし、肌着屋としてのノウハウもありますから、1回につくる枚数は減りましたが、逆に回数は何倍にも増えています。
試作品は世の中にない一点モノですから、制作にはお金がかかります。特に、自社工場をもたない企業の場合、何度も試作品をつくるとかなりのコストが必要です。しかし筆者は、できる限り試作品をつくって試してみることをお勧めします。
仕様書やデザイン画を何枚書いても、商品の本質は見えてきません。試作品をつくり、実際に使ってみることで、初めて分かる問題点がたくさんあるのです。
筆者は、100点満点中15点のダメな試作品でも、つくらないよりつくるほうが絶対にいいと思っています。頭のなかだけに存在する商品は、どんなにアイデアが優れていても、0点のまま。しかし15点の試作品は、実際に使い勝手を検証して次々と改良を加えていくことで、どんどん満点に近づけることができるからです。この「問題点を見つけ、しらみつぶしに解決していくこと」が、商品と企業の価値を高める唯一の道なのです。
商品を市場出したあとも「改良を止めるな」!
問題点をしらみつぶしに解決していく作業は、商品がいったん完成したあとも続きます。
満点スリップの上半身部分には、中空繊維(マカロニのように内部に穴が開いている糸)でつくられた「東レ エアレット」を採用していました。この生地は、吸汗速乾性が高く、よく伸びて肌触りもいい優れものでした。
唯一の難点は、ある程度の気温になると、着ていて暑く感じることだったのです。特に夏場は、暑くて汗をかいてしまうというお客さまのレビューがたくさん寄せられていました。汗から着物を守るという宣伝文句が、「汗イコール夏物」ととらえられ、なおさら暑いという印象を与えてしまったようです。
そこで次世代モデルの「満点スリップ エクストラ」では、生地をリニューアルしました。上半身をさらっとしたドライ感のある生地に替え、汗による張り付き感を抑えることに成功したのです。また、色を1色から5色に、サイズを3種類から6種類に増やしましたし、紐を改良して背中と胸元にピッタリ布が沿うように改良も施しました。その結果、いまではほとんどの方に、初期バージョンの「満点スリップ エアレット」より「エクストラ」をお買い上げいただくようになり、初期商品は廃番となりました。
ただ、完全リニューアルに至るまでにも何度もマイナーチェンジを施しているのです。「肩回りがほんの少しだけ小さいのでは?」「衿ぐりはもう少し幅広く開けたほうがいいのでは?」など、サイズ表記や画像に現れないような小さな修正点や、現場で拾ったお客さまのご意見などを集約し、いつでもマイナーチェンジを重ねています。
ときには、商品を他社にまねられることもあります。うちの商品を分解し、そのままパターンに落とし込むような悪質なものまでありますが、そんなことに腹を立てる暇があったら、追随を許さない質のアップを図っていく以外、お客さまの期待に応える道はないと考えています。
まずは、とにかく試作品をつくって使い勝手を調べ、繰り返し改良を加えて市場に送り出す。そして、いったん完成した商品もお客さまの意見を常に取り入れ、さらに完成度を高めていく。その作業を繰り返すことでたかはしの誠意を伝えられるのだと思います。
髙橋 和江
有限会社たかはし代表
和装肌着製造メーカー「たかはしきもの工房」代表
きものナビゲーター
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