(※画像はイメージです/PIXTA)

ネットショップの急速な台頭により、価格破壊の危機に直面した「きもの業界」。しかし旧来の流通経路に固執するあまり「問屋依存」から脱却することができず、業界は先細りの一途を辿っていました。そんななか、きもの業界の革命児が推し進めた「三方よし」の商品づくりとはどういったものだったのでしょうか。中小企業が生き残るための「ヒットの法則」を紹介します。

問屋を通さず直販する…「いばらの道」を選んだ理由

筆者が日々の試行錯誤のなかで見つけた「ヒットの法則」として「既存の販売ルートにとらわれず、自社商品のメリットがユーザーに確実に伝わるルートを見つける」というものがあります。言い換えると「時には販売ルートに獣道を選ぶ冒険も必要」ということです。

 

多くの小売店やメーカーにとって、問屋は重要なパートナーでしょう。確かに、問屋を通すメリットは大きいものです。しかし、初めてのオリジナル商品・満点スリップを開発したとき、筆者は「問屋を通さず直販する」といういばらの道を選びました。それには理由があります。

 

当時のきもの業界では、和装小物は小物問屋の手を経て流通するのが一般的でした。また、問屋主導で開発が行われるケースも多く、ものづくりがメーカー主導ではないこともしばしばあったと聞いています。それだけに、問屋は単なる流通ということではない立場もあり、メーカーによっては問屋頼りというところもあったでしょう。でも、そうなると問屋の意向に従う以外に生きる道はありません。逆らってそっぽを向かれたら、商売が立ち行かなくなる怖さは大きくなるばかりです。

 

また、当時はすでにネットショップが出始めていました。きもの業界にも価格破壊の波が押し寄せていたのです。問屋を通せば、どこに商品が売られるか分かりません。もし、ネットでたたき売りされたら、うちのような小さなメーカーはひとたまりもありませんでした。また、問屋が店側に、商品の特徴をきちんと説明できるはずはないとも思いました。

 

それらの理由で筆者は一匹狼になる決意をしたのです。

 

ものづくりを始めるときに熟考したことがあります。それは「三方よし」の商品をつくることでした。お客さまにとって、筆者の会社にとって、そしてネットを脅威に感じている呉服専門店にとっても「よし」のものづくりです。筆者はほんの少しでも専門店の味方になりたかったのです。

 

筆者も販売を生業にしている立場でもありましたから、呉服販売の大変さはよく分かっていました。それは今でも変わりません。単価が高い分、取り扱いには注意を要しますし、仕立てなど後加工も多いのが難点です。何よりお客さまの期待が大きいですし、それでいて、商品は手に入りにくくなる一方で、回転率も悪く在庫リスクも高い、本当に因果な商売です。悪代官とつるんでいた儲けまくりの越後屋は、ずっと過去の話。だからこそ筆者は、仲間にとっても喜ばれる商品提供を絶対にしたかったのです。

 

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髙橋 和江

幻冬舎MC

旧態依然としたきもの業界で、赤字経営から脱却。年10%以上のペースで売り上げを伸ばしてきた社長が解説。 古い業界だからこそ風穴は開けられる! 市場縮小が進む業界の状況を打破し、東日本大震災に見舞われながらも、ひ…

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