多くのマンションが採用する設計監理方式の欠陥
管理組合は信頼できる一級建築士を補助者に選任して、適材適所で工事業者に分離発注しました。多くのマンションが採用する設計監理方式は、元請けの施工会社から1次下請け、2次下請けの専門工事業者へと重層的に発注します。
その間でマージンが生じ、工事費が膨らむのです。CM方式は工事業者が横並びですからマージンを圧縮できます。それでCM方式を採用したのです。
「大規模修繕は、足場仮設や屋上防水、外壁修繕、鉄部の塗装とか、建物の部位に分かれますね。各部位の専門業者から見積もりを取りました。一方で、施工会社からも見積もりを取る。施工会社は傘下の部位業者の工事費を積み上げて見積もりを出します。そして、全部の見積もりが揃ったところで、足場なら足場で1番安かった部位業者と施工会社を話し合わせて、業者を入れ替える。そうやってコストを下げていきました」と中津さん。
2015年には三度目の大規模修繕を終えました。管理組合の理事、山本泉さんは「中古マンション観が変わった」と言います。
「私がここに引っ越してきたのは2017年12月でした。それまで横浜に新築されたマンションで生活していたのですが、7、8年前に、ここの住戸を内見させてもらって、中古のイメージがガラっと変わりました。古くても、いいものはいい。逆に新しいものよりもいい。街の雰囲気や生活環境も含めて、ここしかない、と。空きが出たときに不動産屋さんから連絡があったので、すぐに見て即決です。よくぞ、ここまで手を入れて、維持してくださったと思いますね」
小町マンションが危機を脱してからの累計修繕費用のグラフをご覧ください[図表1]。残高は大規模修繕のたびに減りますが、資金の積み立てで回復し、累計収入は着実に増えます。このまま、あと半世紀、静かに時を刻んでゆく予定です。
山岡 淳一郎
ノンフィクション作家
東京富士大学客員教授
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