鎌倉の小さな老朽マンションが「楽園」に生まれ変わったワケ

住民の高齢化と建物の老朽化という「二つの老い」がマンションを直撃しています。しかし、そんななかでも鎌倉の老朽マンションが「楽園」に変わった事例を、作家の山岡淳一郎氏の『生きのびるマンション 〈二つの老い〉をこえて』(岩波新書)より一部を編集・抜粋して解説します。

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鎌倉の老朽マンション…内情はとんでもなかった

マンションが超高齢化の波を受けとめ、スラム化を防ぐには何からどう手を付ければいいのでしょうか。状況が厳しくなるなか、スラム化の危機を脱し、「楽園」の域に達した高経年マンションもあります。

 

(写真はイメージです/PIXTA)
(写真はイメージです/PIXTA)

 

神奈川県の古都、鎌倉。観光客がひしめく大通りから少し入ったところに「小町マンション」が閑静な街並みに溶けこんでいます。竣工は1970年。ほぼ半世紀を経ていますが、3、4年に一度、空室が出ると、瞬く間に売れます。

 

戸数は14、戸当たりの平均居住面積が109平米と広く保たれています。80平米の住戸で中古価格は4000万円を超えています。鎌倉駅周辺は景観地区に指定され、建築規制がかけられており、今後、近隣にマンションが建つ可能性は低いとみられます。

 

小さくて古い、「二つの老い」を背負うはずのマンションが、どうして楽園に生まれ変われたのか。住民のキーパーソンで、元管理組合理事長の中津元次さんを訪ねました。

 

中津さんが小町マンションに入居したのは1985年。その当時、分譲開始から15年が過ぎ、マンションは荒れていました。

 

開発した電通恒産(現・電通ワークス)は分譲マンション事業から撤退し、維持管理に消極的でした。管理組合も崩壊し、惨憺(さんたん)たる状態だったのです。

 

「お風呂に入って湯の蛇口をひねったら冷水しか出ません。震えて飛び出ました。当時は1階と屋上に灯油タンクが置いてあってボイラーで沸かしていたのですが、まったくメンテナンスしていなくて、まともに動かない。高架水槽から冷房用の水を全館に送っていたのですが、ファンが回る音がうるさいと近所からクレームがついて、夜10時で冷房はストップ。トイレの下水は浄化水槽で処理していましたが、市は公共下水道への接続を奨めていて時代遅れ。次から次に問題が起きて、正直、こりゃ参ったな、と思いましたね」

 

と、中津さんはふり返ります。「何とかしなきゃ大ごとになる」と意を決したのは、初めて管理組合の住民総会に出たときでした。維持管理に必要な資金がまったく貯まっていなかったのです。

 

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ノンフィクション作家
東京富士大学客員教授

1959年愛媛県松山市生まれ。出版関連会社、ライター集団を経てノンフィクション作家となる。
「人と時代」「21世紀の公と私」を共通テーマとして、政治、経済、建築、医療、近現代史、エネルギーなど分野を超えて旺盛に執筆。
ドキュメンタリー番組のコメンテーター、様々な団体やNPOなどに招かれての講演活動も展開。月刊誌『世界』(岩波書店)に「コロナ戦記」連載中。ネットのニュース解説メディア、デモクラシータイムス同人。

著者紹介

連載生きのびるマンション~「二つの老い」をこえて

生きのびるマンション 〈二つの老い〉をこえて

生きのびるマンション 〈二つの老い〉をこえて

山岡 淳一郎

岩波書店

建物の欠陥、修繕積立金をめぐるトラブル、維持管理ノウハウのないタワマン……。さまざまな課題がとりまくなか、住民の高齢化と建物の老朽化という「二つの老い」がマンションを直撃している。廃墟化したマンションが出現する…

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