家族と一緒に暮らしてるのに「孤独」の現実
「家族はみんな旅行に行ってしまって、わたしは独りぼっちです」
お盆休み真っ只中。ご近所からは、帰省してきた子どもや孫を迎えるにぎやかな歓声や笑い声が聞こえてきます。
しかし、78歳の登紀子さん(仮名)は、静まりかえった家の中で一人、お茶をすすっていました。息子夫婦と同居している登紀子さん。本来なら家族団らんで過ごすはずの大型連休ですが、息子一家は4泊5日で旅行へ。登紀子さんは最初から「お留守番」が前提でした。
「これだけ暑いと、行ってもしんどいのかもしれません。それでも『一緒に行く?』と一言ぐらい聞いてくれてもいいんじゃないでしょうか」
そう語る登紀子さんの収入は、自身の老齢年金と亡き夫の遺族年金を合わせて月15万円ほど。そのうち、食費や水道光熱費といった住居費の補填として毎月10万円を息子夫婦に渡し、残る手元のお金は5万円です。
「夫が他界したとき、息子が『一人じゃ心配だから、一緒に住もう。孫も喜ぶから』と声をかけてくれたんです。あの時は涙が出るほど嬉しくて、これで寂しくないと思っていました。ですが……」
同居を開始して4年。その思いは失われつつありました。
平日は登紀子さんが家族全員分の夕食の準備をしていますが、共働きの息子夫婦は連日残業で帰宅が遅く、高校生になった孫も部活動や塾、友人との付き合いで夜遅くまで戻りません。結局、登紀子さんは毎晩一人で食事をして、自室に戻っています。
「せっかく作っても『おいしい』の言葉もない。それどころか、手つかずで残ったご飯が冷蔵庫にしまわれているのを見ると、悲しくなりますよ」
お風呂もみんなが入った後の深夜に入るか、誰もいない明るいうちに済ませているという登紀子さん。階下から息子夫婦や孫の楽しそうな笑い声が響いてくると、狭い自室で強い疎外感に襲われることもあるとか。
「同じ家で暮らしているのに、私だけが『いないもの』として扱われているような気がするんです。もしこの部屋で急に倒れても、家族は数日間気づいてくれないんじゃないか……そんなことが頭をよぎります」
