親から相続した不動産を、形を変えずに持ち続けようとする相続人は多いのですが、そのために多額の相続税が必要になったり、その後も固定資産税や維持費が発生するなど、「負動産化」する例は枚挙にいとまがありません。すべて売却し、組み替える思い切りも重要です。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

資産を組み替え、タワーマンションで暮らすことに

福田さんと弟さんはこの提案に賛同し、すべての土地の売却を決断しました。ちょうど土地価格が上がっていた状況もあり、買い手はすぐに見つかり、相続税の申告期限までに売買契約、申告後に売却が完了しました。

 

福田さん夫婦はとりあえず賃貸でタワーマンションに住み替え、ゆっくり自宅を探すことにしました。ほかにも区分マンションを2つ購入したことで、毎月安定した家賃収入が入る資産を持つことができたのです。弟は、これまで暮らしてきたマンションのほか、予定通りの額の現金を相続できました。

 

このように、兄弟の協力によって相続手続きは円満に終了しました。

「活用してこそ財産」との認識が浸透しつつある

時代の変化にともない、生活スタイルだけでなく、財産の持ち方や使い方、相続の仕方なども少しずつ変わっています。親から受け継いだものをそのまま持ち続けることに注力するばかりでなく、もっと柔軟に考えて、よりプラスが生み出せる、後悔のない選択をしたほうがいいといえます。

 

筆者はこれまで、多数の方の相続相談に乗っていますが、少しずつではあるものの、いままでの形にとらわれない、自分たちに合った相続スタイルを選択される方も増えてきたと感じます。今回の福田さんも、長年住み慣れた自宅や、親の代から保有していたアパート等を売却してタワーマンションに住み替えるという、思い切りのいい見事な決断をされました。

 

最近、福田さんご夫婦に会う機会がありましたが、とてもお元気そうで、以前よりずっと若々しくなっていました。資産組み替えのために物件を見に行くのを楽しんでいます、と明るく話してくれました。

 

福田さんご一家を見て思うのは、相続税の納税や、財産の現状維持に苦しむのではなく、財産を現実的かつ積極的に活用し、より快適な人生を過ごすことの大切さです。手元にある財産を活かし、幸せのために役立てることが重要なのではないでしょうか。
 

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

曽根 惠子

株式会社夢相続代表取締役

公認不動産コンサルティングマスター

相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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