父が亡くなって10年経過も、財産を離さない長姉
今回の相談者は、ともに50代の姉妹、明子さん(次女、既婚)と陽子さん(三女、既婚)です。明子さんと陽子さんの父親は、亡くなってすでに10年以上経過してますが、独身の長女が実家に住み続けて父親の財産を掌握し、相続手続きが滞って困っているとのことでした。
明子さんと陽子さんは、自分たちが独り身になったときや夫が急に働けなくなったときに、長女が財産分割に代わる経済的な援助をしてくれるのかとても心配していました。
「私の夫は2年前に脳梗塞で倒れ、これからも治療が必要になります。妹の夫は失業してしまったので、妹もなんとかパートで頑張って生計を立てています」
三姉妹の母は40代後半という若さで病に倒れ、50代で亡くなっています。
「私たちも母が亡くなった年齢まであとわずかです。それぞれが元気で働けるいまのうちに相続手続きを完了させたいのです。お互いの権利を尊重しながら結論を出して、これからも、私たちの誰かが困ったときに助け合える姉妹でいたいのです」
「親の介護をしてきた私が、家を追い出されるなんて」
最初の面談から数日後、筆者のもとに長女の光子さんから直接電話がかかってきました。
光子さんは現在、父親が残した実家でひとり暮らしをしています。借金こそありませんが、仕事は安定せず、金銭的な余裕もあまりありません。そのため、遺産分割のために実家を売却したいとは思っているものの、引っ越しの資金が用意できないといいます。
事情を説明する光子さんの口ぶりからは、納得しかねる思いが伝わってきました。
「介護できないという妹たちの代わりに、仕事を辞めて親の介護をしてきた自分が、どうして家を追い出されなければならないのでしょうか。理不尽です…」
独身の光子さんは、配偶者や子どもの世話で手が回らないという2人の妹に代わって父親の介護をするため、長年働いていた会社を退社しました。その後、献身的に面倒を見てきたそうです。その後父が亡くなり、復職しようにも正社員での就職がかなわず、アルバイトしかない状況です。
しかし、そのような事情であっても、明子さんと陽子さんの2人には、父親の財産を受け取る権利があります。
後日、3姉妹と打ち合わせした際に資産状況を調べたところ、父親の預貯金は残っていませんでした。そこで筆者は、実家を売却し、姉妹で分割する方法が現実的ではないかと提案すると、光子さんもようやく納得したようでした。
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