父親の介護をした独身の長女が、実家に居座って10年経過。2人の妹が遺産の分割を依頼してもらちがあきません。介護を理由に父の財産を掌握する長女を動かすには、どうしたらいいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

不動産を分割するには「売却」が合理的な選択肢

筆者が光子さんが暮らす実家を拝見したところ、かなり築年数が古く老朽化が進んでおり、いずれにしろ住み替えが必要な状態でした。不動産を分割するには、売却が現実的かつ合理的な選択肢です。今回のケースでは相続税はかかりませんが、譲渡(所得)税が安くすむよう、姉がいったん相続し、2人の妹に代償金を払う方法を提案しました。

 

 

具体的には、長女の光子さんが家を相続して売却し、諸費用(引っ越しや解体にかかる費用)を支払ったあと、残金を3等分して、妹2人にそれぞれ支払います。譲渡(所得)税がかからない分だけ手取りが多くなります。

 

この方法で姉妹全員の合意が得られたため、光子さんは引っ越しと売却の手続きを開始しました。

 

これまでも姉妹で話し合ったことがあるそうですが、感情的になってしまうなど、話が進展しませんでした。そのため、父亡きあとの10年間という時間のなかで、不満ばかりが蓄積される状態となってしまいました。しかし、たまたま明子さんと陽子さんが第三者でに相談したことで、こじれていた話も収束へと向かいました。他者の視点を交えて解決方法を模索することで、円滑な話し合いが実現できた好例となりました。

 

もし仮に、関係がこじれたまま調停で争ったとしても、財産の分け方を決めるだけでは家族の絶縁につながりかねません。過去の不満は家族それぞれあると思いますが、まずは目の前の問題について前向きに検討することで、建設的な道が開けるのだと思います。

 

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

曽根 惠子

株式会社夢相続代表取締役

公認不動産コンサルティングマスター

相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

 

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    本記事は、株式会社夢相続が運営80代するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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