「すぐに与える」、その姿勢が子供から集中力を奪う
では、なぜそんな子になってしまうのでしょうか? それも過保護が原因です。
子供のころから何かを与える。それに集中して遊び尽くさないうちから、すぐに別のものを与える。あるいは親が先取りして答えを与えてしまう、腕を引っ張って次に向かってしまう。それを続けているから、自分で判断ができないだけでなく、何かに集中して、観察して、あるいは使いこなして、自分のものにしていくことができない。そういう習慣が身につかなかったのだと思います。
そうではなくて、たとえば、おもちゃを一つ与えたら、徹底的に遊ばせる。遊んで、遊んで、遊び尽くすまで、ほかのものは与えない。そうすれば、たとえそれに飽きても、新しいおもちゃがなければ、何かで遊ぼうとするものです。そこから創意工夫も生まれます。
ところが、そのおもちゃに飽きてもいないのに、またすぐに次のおもちゃを与えてしまう。いつの間にか、たくさんのおもちゃが散乱している。そうなれば、心は散漫になる。興味の対象も絞り切れなくなる。それで分からなくなっているところに、両親やおじいさん、おばあさんがよってたかって、「次はこうするんだよ」と教えてしまう。そうやって落ち着きのない子供に育ててしまうのです。
そうした子供のころからの習慣が、おもちゃを勉強に置き換えてもそのまま出てしまうわけです。また、そうやって身についた習慣からは、おいそれとは解放されません。
つまり、そういう子は、「ここがポイント!」と言った時にはすでに違うことを考えてしまっています。逆に集中が切れない子は、「ここがポイント!」と教師から言われれば、集中しているので、その意味をすぐに理解して覚えます。
集中できない子は、「ここがポイント」と大きな声で言われると、とりあえず書きます。しかし、頭が泳いでいますから、とりあえず書いただけでポイントの内容がピンとこないのです。その繰り返しです。だとすれば、「同じように授業を聞いていても、結果は大違い」というのも頷けることでしょう。
長澤 潔志
医学部専門予備校・TMPS医学館代表取締役
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