模擬試験、テストを受けない生徒の驚愕理由
予備校の正しい活用法③模擬試験とテスト
予備校では大小さまざまなテストを行ないます。私の教えている医学部受験予備校では早朝テスト、週1回のテスト、月1回の模試があります。こうしたテストを受けることも、予備校活用法として大きな意味があります。
しかし、なかにはテストを受けない生徒も少なからず見受けられます。私が複数の医学部受験予備校で講義をしていた時のこと、大手予備校の模試を年に数回受けさせていました。ほとんどの生徒はこの模試を受けましたが、一部の生徒は姿を見せませんでした。1週間後、そのうちの1人が登校してきて、「先日の模試を受けます」と言います。私は見上げたものだなと感心しましたが、10分ほど過ぎると、「答えをください」と言うではありませんか。これには驚きました。
この生徒のようなことをやっていては、予備校に席を置いていても予備校を活用していることにはなりません。
たとえ問題が解けなくてもテストは受けるべきである、と私は考えています。なぜなら、そのひとつひとつが経験となるからです。
テストを受けない人は、往々にして、「まだ力がついていなくて問題が解けないので受けない」「悪い成績が親に露見するのが恥ずかしいから受けない」と言います。前者の理由は確かにそうです。しかし、それならば日頃きちんと勉強すればよいのではと思わずにはいられません。そういう人は何年予備校に通っていても良い結果は出ないでしょう。
予備校が販売している「センターパック」という問題集を活用する生徒もいるようですが、これもひとつの方法です。やる気のある者が集まって、センター試験の問題を時間を計って解くのです。良い仲間と競い合うことができるのは、予備校の非常に良い点です。
ハングリーであれ!
大手予備校の良さは、ハングリーな人が多いことです。いっぽうの医学部専門予備校は学費が高いことから、開業医など裕福な家庭の子どもが多く集まっています。経済的に余裕があるので、個別指導もどんどん追加していきます。
ところが、貴重な個別指導の時間に、先生と雑談してすぐに脱線してしまうのも、そういう子どもたちです。今年何が何でも受からないとあとがない、という切迫感が希薄ですから、気持ちの強さがなかなか出てきません。なかには5浪、6浪という強者もいます。
普通の家庭に育った子どもにとって、そういう多浪生が周囲に多いことはけっして良い環境とは言えません。一緒につるんで〝ゆるい〞勉強をしていて不合格になれば、泣きを見ることにもなりかねません。
以前、興味深い指摘をした母親がいました。
「学費が1000万円ほどかかる予備校、500万円の予備校、そして200万円の予備校と色々な予備校を見ましたが、トイレと教室が一番粗末な予備校に決めました」
今の子どもたちは清潔で整った環境で育ってきており、トイレも教室も机もきれいであることが当然と思っています。某予備校では、「教室のエアコンがカビ臭い」と生徒からクレームが出て、あわてて専門業者に依頼して洗浄したそうです。
こういう時代にあって、前述の母親は少数派かもしれません。トイレも皆が学んでいる教室の後方にあり、用をたす音を消すしくみもない。机はギーギー音がする。建物も古い。しかし、そういう環境で勉強したほうが子どもにとっての修練の場になるのではないか、向上心が育まれるのではないか、と考えたそうです。
そして器にお金がかかっていないことから、派手な広告費など受験指導と直接関係のないお金を使わずに純粋に教えることにお金とエネルギーを注いでいるのではないかと、考えたそうです。これも予備校を選ぶ際のひとつの考え方かもしれません。
また、予備校のオーナーや塾長について言えば、的確なアドバイスができる人であることが重要なポイントです。そして、入試情報を豊富に備えていることも必須の要件です。
小林 公夫
作家 医事法学者