医師という職業に対する安定志向の高まり、私大医学部の学費値下げ(東京女子医科大学など、現時点では数校値上がりしている大学がある)などもあり、近年、医学部人気が高まっているという。従来からの医師家庭や富裕層にサラリーマン家庭が続々参戦し、全国の82医学部入試の難易度が上昇している。では、どうすれば難関の医学部を突破できるのか。わが子の育て方、接し方から入試対策までを明らかにする。本連載は小林公夫著『わが子を医学部に入れる』(祥伝社新書)から一部を抜粋し、再編集したものです。

医師国家試験、「合格率」の裏事情

医師国家試験の合格率比較

 

経済的な観点の他に、国公立医学部と私立医学部のどちらを選ぶかで重要なポイントは、医師国家試験の合格率です。一般的に、国公立医学部のほうが合格率が高いイメージがあるようですが、そうとも言えません。

 

実際どうなのか、少々〝裏事情〞を述べましょう。国公立医学部は基本的に6年生全員が受験する傾向にあるようですが、私立医学部は成績の悪い学生は受け控えをする大学があると推測されます。

 

最近の状況はわかりませんが、私が複数の医学部受験予備校で講師をしていた頃、某私立医学部に通う教え子から、高学年のクラスが2クラスに分かれていることを聞いたことがあります。成績が良くて医師国家試験を受けられるクラスと成績がもうひとつで医師国家試験を受けられないクラスです。後者は医師国家試験を受けても不合格になるリスクが高く、そうすると大学の合格率が下がってしまうので受験を控え、翌年にチャレンジするとのことでした。

 

 

このように書くと、私立の医学生は出来が悪いように聞こえるかもしれませんが、けっしてそういうことではありません。私立医学部は学費が高いため、医師国家試験の合格率が低いと、翌年の医学部受験者数がガクッと減ってしまいます。これは、そのような事態を避けるための配慮であり、確実に受かる力のない6年生は医師国家試験の受験を控えてもらうという程度です。

 

逆に言えば、合格率に敏感な私立医学部のほうが、国公立医学部よりも面倒見がいいとも言えます。一例ですが、金沢医科大は6年生の夏に強化合宿があり、医師国家試験対策を行なっているそうです。また、兵庫医科大は大学に医師国家試験予備校の導入を先駆的に行ないました。

 

いっぽう、国公立医学部は「放任」と言うとおおげさかもしれませんが、優秀な学生たちの自学自習に任せています。ところが、なかには努力を怠る者もいるようで、不合格となって合格率を80%台に引き下げてしまうのです。このように見ていくと、ある意味で、管理体制という視点からは、私立医学部に軍配が上がるかもしれません。

 

私立医学部ばかりを持ち上げているようですが、もちろん別の視点もあります。大学の研究に対して、国が出す科学研究費補助金(科研費)が、旧帝大と私立大では段違いである点です。

 

文部科学省によると、2014年度科研費配分額は、東大がもっとも多く約168億円、次が京大の110億円、私立大では慶應義塾大が27億円、順天堂大が7億円となっています。科研費が多いほうが研究の幅が広がるため、この点を揶揄して「腐っても鯛」ならぬ「腐っても国立」と言う人もいるほどです。

 

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わが子を医学部に入れる

わが子を医学部に入れる

小林 公夫

祥伝社

近年、医学部志願者が急増しています。その要因として、医師という職業に対する安定志向の高まり、私大医学部の学費値下げなどがあげられます。これにより、従来からの医師家庭や富裕層にサラリーマン家庭が参戦。全国の82医学…

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