医師という職業に対する安定志向の高まり、私大医学部の学費値下げ(東京女子医科大学など、現時点では数校値上がりしている大学がある)などもあり、近年、医学部人気が高まっているという。従来からの医師家庭や富裕層にサラリーマン家庭が続々参戦し、全国の82医学部入試の難易度が上昇している。では、どうすれば難関の医学部を突破できるのか。わが子の育て方、接し方から入試対策までを明らかにする。本連載は小林公夫著『わが子を医学部に入れる』(祥伝社新書)から一部を抜粋し、再編集したものです。

首都圏で家庭教師を利用する動きが顕著

その点、大手予備校は費用が比較的安いうえ、学住一体の快適な学習・居住環境のところもあります。教室のあるビルの高層部分が寮になっており、そこからエレベーターで降りてきて、すぐに授業が受けられる便利さです。これは親にとっては何かと安心です。

 

しかし、次のようなケースはどうでしょう。某予備校に通う生徒から聞いた話では、授業後、居酒屋に行って飲食をすることが常習化していたそうです。比較的、浪人年数も長く同年代の仲間が集まる予備校は、大学のサークルのように仲間との交流を楽しむ場になる可能性は十分にあります。

 

同じ目標に向かう仲間どうし、切磋琢磨するのは大歓迎ですが、一緒に遊び呆けてしまっては元も子もありません。

 

予備校の正しい活用法①個別指導か、集団講義か?

 

さきほど、個別指導をおすすめしましたが、大手予備校にも個別指導はあります。しかし、担当するのは集団講義の上位クラスを担当する講師ではないケースが多いようです。

 

個別指導は、講師の力量に左右されると言っても過言ではありません。教える力のある講師かどうかは、予備校のホームページを見れば合格実績が掲載されていますから、ぜひ確認してください。ただ、そういう力のある講師は指導料が高額です。その点も勘案する必要があります。

 

ある予備校関係者は、「最近、首都圏では予備校ではなく家庭教師を利用する動きが顕著です。時間を無駄にしたくないというのが、その最大の理由のようです」と話しています。確かに、たとえば通学に往復で1〜2時間かかるとすれば、その時間を勉強に充てれば、それだけ多くの問題を解くことができます。

 

また、前述のように、予備校で〝悪友〞とつきあう可能性もありますから、自宅に家庭教師に来てもらうことに人気が集まるのにはうなずけます。

 

ただ、個別指導の講師と同じように、家庭教師にも当たり外れがあります。家庭教師の多くは、大学生や大学院生のアルバイトです。もちろん偏差値の高い有名大の学生がほとんどですから、頭の回転も早く知識も豊富です。

 

しかし、いかんせん学生は、教えることのプロフェッショナルとは言えません。目指す医学部の入試問題の傾向を分析して、「来年はこういう問題が出題されやすいから、こういう対策を立てましょう」とはならないのです。

 

予備校の正しい活用法②自主性か、厳しい管理か?

 

たいていの予備校には自習室があります。私は、この自習室をおおいに活用するべきと考えます。予備校で集団講義や個別指導を受けるだけでは、もったいないです。逆に言えば、自習室が充実していない予備校は避けたほうがいいでしょう。

 

自習室が朝9時から開く予備校がありますが、これでは遅すぎます。1浪の末、横浜市大医学部に合格した受験生は、早朝に予備校の自習室に行き、英単語の学習や、数学の問題を必ず何問か解くようにしていました。朝の自習室は誰もいません。静かで勉強に集中できます。そういう自分の時間を作れる予備校を、選んでいただきたいと思います。

 

予備校をうまく活用できない人は、受験で良い結果を出せません。せっかく自習室が朝7時から開いていても、ほとんどの生徒は7時には登校しません。9時でもパラパラです。多くの受験生は朝が弱いのです。だから、朝から始まる本番の試験でも力が発揮できないのです。

 

「どういう勉強をしたらいいですか?」と質問してくる受験生がよくいますが、勉強の内容よりも、どれだけ勉強を積み上げるかです。結局はそれに尽きます。結果の出ない人は、勉強法ばかりに気を取られ勉強をしていません。受かっていく人はそれだけ勉強をしているのです。

 

自分が怠け者だと思う人は、きちんと管理してくれる予備校を選ぶといいでしょう。生徒に厳しい予備校では、「今日何をやるか」「それができたか、できなかったか」を紙に全部書かせ、それについて生徒にアドバイスをしていきます。こういう予備校であれば、モチベーションの低い受験生も毎日決まった時間、勉強をせざるを得ないでしょう。

 

このような勉強法や管理法の是非についてはさまざまな意見はあるでしょうが、医学部合格に向けて、勉強が継続的にできる環境かどうかという観点から予備校を選ぶべきだと私は思います。

 

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わが子を医学部に入れる

わが子を医学部に入れる

小林 公夫

祥伝社

近年、医学部志願者が急増しています。その要因として、医師という職業に対する安定志向の高まり、私大医学部の学費値下げなどがあげられます。これにより、従来からの医師家庭や富裕層にサラリーマン家庭が参戦。全国の82医学…

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