医師になる「学士編入学」という方法
学士編入学で、医学部へ
昨今、人気が高まり偏差値の急上昇で狭き門となっている医学部ですが、一般入試の受験以外に「学士編入学」という手段もあります。
大学を卒業した学士号取得者や大学2年次までの単位を取得した大学在学者が他大学に編入する学士編入学は、募集人数は少ないものの、大学入学共通テストや二次試験を受ける必要がなく、科目数も少ないのが特徴です。試験内容は大学によって異なりますが、一般的に書類審査、筆記試験、面接の総合点で合否が決まり、入学後は他大学で取得した一般教育科目は単位認定される場合が多いので、改めて単位を取得する必要はありません。
私立の女子大を卒業後、テレビの分野で情報発信することにやりがいを感じ、番組制作会社に就職したLさんは、6年間精力的に勤めたあとに退社。開業医である父親の病院で事務を手伝いながら勉強を始め、東海大医学部に学士編入学しました。
番組制作会社では寝る間もなく働いていましたが、視聴率至上主義の世界で「もっと、直接人の役に立つ仕事がしたい」と思うようになったと言います。診療はもちろん、医師会の会合、研究会、事務までこなす父親の姿は子どもの頃から刷り込まれており、医療の道はずっと意識していたそうです。そして、大学在学中に学んだ児童心理学を役立てようと、病院で事務を手伝って2年目に、本格的に受験勉強を開始しました。
最初は一般入試を目指し、英語、数学、理科全般の勉強に取り組んでいました。しかし、当時30歳であるLさんは多浪生と同じで、20代で同じ得点の人がいた場合、一次試験で通っても二次試験(面接)で落とされる可能性があり、他の志願者より高得点を取る必要がありました。そこまで学力を上げるのは難しいと考えたLさんは学士編入を視野に入れ、対策を練りました。
東海大医学部の学士編入試験の過去問を見ると、英語はいわゆる受験英語ではなく、口語英語の文体で、慣用句も多く出てきます。そこで、TOEFL(Test ofEnglish as a Foreign Language /外国語としての英語のテスト)や英語検定の塾やテキストを利用して英語力を上げ、高得点を得ることができました。数学の適性試験は、公務員試験用のテキストを使い、時間内に問題を終えるトレーニングをしたそうです。
東海大医学部は学士編入試験を一般入試と区別している節があり、受験勉強に専念してきた人とは違う適性を見ているようです。受験のトレンドを追っていない社会人でもチャンスをつかめるようにしているのかもしれません。もちろん、医学部ですから偏差値は最低でも65は必要で、基礎学力がなければ話になりません。
二次試験では3〜5個の文章を渡され、それらを読んでひとつを選択し、選んだ内容について10分間スピーチをします。文章を読み、考えをまとめる作業時間が10分間、スピーチが10分間、質疑応答が10分間という時間配分です。
限られた時間のなかでいくつもの長文を読むのは難しいので、大まかに問題文の内容を把握したら、どれを選択するか即決します。その時に忘れてはいけないのが、あくまで医学部の試験であり、話を聞く相手が医学部の教員であることです。