ステップ3:登録保育士を手配する
ステップ3が保育士の登録です。これも1つのネックになりがちですが、開業の申請をするときに保育士の登録もしなければならないのです。自治体によっては、職員名簿は採用が確定してから追加で提出すればいいというように融通が利くところもありますが、基本的には、就業する保育者をそろえてから申請です。
なお、申請時点の保育者が必ずしも就業する必要はありません。雇用者が労働者を確保できるのは14日間だけです。それ以降は労働者には辞める権利があります。もし、自治体が申請時の保育士でなければダメだというのであれば、それは「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転および職業選択の自由を有する」を保障する憲法違反ですからあり得ません。
保育所の人員配置基準は、子どもの人数に合わせた保育者と加配の保育者です。子どもの人数とは定員ではなく、実際に利用した人数ですから、とりえず、保育者は2人いれば十分です。
管理者を置かないと減算になってしまいますが、準備中に減算もなにもないので、とりあえず、園長予定の保育士とパートの保育士を採用しておけば十分です。
なお、管理者は、必ずしも保育士の資格は必要ありませんが、誰でもできるわけではありません。例えば、民生児童委員を経験していたり社会福祉主事を経験していたり、子どもに関係する仕事を3年程度経験した場合に、管理者になることができますが、小規模保育所では保育士に管理者(園長)をお願いするほうがよいでしょう。
ただし、たとえ管理者が保育士であったとしても、管理者は保育者換算にはなりませんのでご注意ください。園長予定の方やパートの方に保育園の方針や申請書類を作成してもらいながら、開業準備を進めていきます。これが6ヵ月前です。
ステップ4:「申請書類」を提出する
オープン3ヵ月ほど前には、申請書類を提出します。これは、必ずしも3ヵ月前と決まっているわけではありませんので、過去には2ヵ月前に提出したこともあります。
書類を提出すると自治体がチェックをして、オープン1ヵ月前に正式な許可が下ります。申請書類についても、それまでの関係が良好であれば、自治体の職員は丁寧に説明してくれます。大切なのは、自治体の側に立って「一緒に地元の保育問題を解決しましょう」という姿勢を保つことです。市民活動家にありがちな「俺は正しいことをやっているんだ。公権力はもっと協力しろ」という姿勢は絶対にダメです。
なお、開業マニュアル本の多くは、こうした申請書類の書式や運営に必要な書類の書式、運営マニュアルを紹介していることが多いのですが、本記事では扱いません。
それは、書式は自治体によって求められる基準が違うからです。A市で承認された申請書類がB市では訂正されたということは日常茶飯事です。本書の書式がミスリードを招いてはいけません。書式は開園を希望している自治体の意向に沿えばいいだけです。
マニュアル類については、保育園の特徴として、都道府県や市町村からマニュアルの訂正や追加の指示がよく届きます。
ちなみに、2021年1月下旬には「節分の豆等の食品による子どもの窒息事故の予防に向けた注意喚起について」と題された数十ページに及ぶガイダンスが届きました。要するに、小さい子どもには危険だから節分イベントで豆を食べさせないようにしましょうということです。こうした先を読んだガイダンスが毎週のように届くのです。
筆者たちは、いろいろなフランチャイズ事業を運営していますが、認可保育所は、いわば自治体がフランチャイズ本部で、筆者たちが加盟店のような存在なのです。
フランチャイズは、加盟店が好き勝手に運営してはいけません。認可保育所もそれと同様です。本部である自治体のマニュアルやガイダンスに従い運営をしていけばよいだけです。本当のフランチャイズと異なり、ロイヤリティを取られることもありません。
河村 憲良
株式会社Five Boxes 代表取締役
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