企業による「小規模保育所」運営ビジネス…開園までのスケジュール管理と行政との交渉(3ヵ月前~1ヵ月前)

企業による「小規模保育所」運営ビジネス…開園までのスケジュール管理と行政との交渉(3ヵ月前~1ヵ月前)

企業による保育園ビジネス参入には、事業多角化による経営安定や子育て世代の女性従業員の定着など、数多くのメリットがあります。では実際に保育園事業へ参入・小規模保育所の経営を実現する場合は、どのような手順を踏めばいいのでしょうか。ここでは、保育所開園3ヵ月前~1ヵ月前に必要な手続きを詳述していきます。

保育園の開園申請からオープンまでの流れとは?

保育園をオープンさせるまでの流れとして、半年前、3ヵ月前、1ヵ月前を区切りとした、合計7つのステップが存在します。『企業による「小規模保育所」運営ビジネス…開園までのスケジュール管理と行政との交渉(半年前~3ヵ月前)』で紹介した「4つのステップ」に続き、ここではオープン3ヵ月前~1ヵ月前に必要となる5つめのステップについて解説します。

 

【オープン半年前】

 

ステップ1 自治体の窓口でヒアリング

ステップ2 保育所の場所を確保する

ステップ3 登録保育士を手配する

ステップ4 申請する

 

【オープン3ヵ月前】

 

ステップ5 保育士を募集・採用

 

【オープン1ヵ月前】

 

ステップ6 認可が下りる、開園準備

ステップ7 オープン、最初は半日保育で態勢を整える

ステップ5:開園3ヵ月前、保育士の募集・採用を進める

オープン3ヵ月ほど前から保育士の手配を進めていきます。4月にオープンするのであれば前の年の12月ぐらいから、募集を始めるとよいでしょう。なぜなら、保育士の求人は12月から1月に向けてピークを迎えるからです。

 

保育士は、仕事を年度単位で考えています。3月まであと3ヵ月ほどになると、転職するにしても3月まではいまの保育園で働き、4月から別の保育園で働きたいと考えます。これは、年度の途中で辞めてしまうと担当の子どもたちに迷惑をかけると考えているからです。

 

保育園側にしてみると2月下旬に「3月末で退職します」と言われても困りますので、多くの保育園では年内に調査を行います。そこで保育士が不足しそうなら求人を出します。そのために12月くらいにピークを迎えるのです。転職希望の保育士にとっても選択肢が増えるわけですから、その時期に検索している方はとても多いのです。

 

保育園には1回しか使えない魔法の募集ワードが存在します。それは「〇月新規開園! オープニングスタッフ募集! 一緒に新しい保育園をつくりましょう!」です。ほとんどの保育士は、人間関係の悩みや、希望しても正社員にしてくれないなどの理由で転職を考えますので、しがらみのない職場はとても魅力的に映ります。

 

商売では相手のことをよく知ることがポイントです。保育士の求人もそれと同じです。保育士がなにを不満に思っているのかを前もって知っておくことが重要です。

 

まず、働きやすさの要因としては臨床心理学者であるフレデリック・ハーズバーグが提唱する「ハーズバーグの二要因理論」があります。転職希望者は、苦痛を避けようとする動物的欲求をベースとした要因(衛生要因)が退職の動機になっていますので、次に衛生要因の項目を挙げます。

 

1 法人の政策・方針・理念

2 管理・マネジメント体制・業務内容

3 トップや上司との相性・関係性

4 職場環境・利便性

5 給与・休暇

6 同僚との関係

7 部下との関係


さらに、2014年に東京都福祉保健局が公表した保育士実態調査報告書より保育
士における現在の職場の改善希望点の上位5つの結果を挙げます。

 

1 給与・賞与等の改善(59.0%)

2 職員数の増員(40.4%)

3 事務・雑務の軽減(34.9%)

4 未消化(有給等)休暇の改善(31.5%)

5 勤務シフトの改善(27.4%)

 

これらの情報を加味して、自社の方針を伝えます。ポイントは、前職を辞めた理由を先に聞かないことです。心理学に「バーナム効果」というものがあります。誰にでも当てはまりそうなことを言われた人が、自分にズバリ当てはまっていると思い込み、それが好意や信頼に発展する現象のことです。ちょっと胡散臭い占い師のような気もしますが、例えば応募者から、休みが取れないことに不満を述べられてから「ウチは大丈夫ですよ」というよりも先に、「ウチは保育士がきちんと休める体制を採っています」というほうが効果的なのです。

 

既存の保育園や幼稚園で休みが取れないことが退職理由の人なら「それ、まさにウチの園のことです(笑)」と和やかな雰囲気になります。

 

ただし、口からデマカセの調子乗り発言は絶対にダメです。むしろ、ダメなものはダメということはきちんと伝えるべきだと思います。

 

筆者たちの保育園には毎年100人以上の保育士の応募がありますが、面接で辞退される方もたくさんいます。それは、不満要因と分かっていても運営上で譲ることができないデメリットをきちんと伝えるからです。

 

また、雇用契約書の説明は丁寧にしましょう。雇用契約書をちゃんと作成しないというのは論外です。保育所などの福祉施設の法令違反で最も多いのが「職員の水増し」です。そのため、基準を満たした保育者がちゃんと在籍しているかどうかは厳しく見られます。

 

そこで必要となるものが、雇用契約書、辞令、タイムカード、賃金台帳です。正直、中小企業では辞令がないところも多いでしょうが、処遇改善加算の実績報告などで必要となる場合がありますので、準備しておきましょう。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

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安定収益と社会貢献を両立する小規模保育園経営

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河村 憲良

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