保育士の給与や処遇が改善しない背景に、保育所の収入が「子どもの人数」で決まる構造、そして「福祉サービス」によるお金儲けを許さない古い価値観があります。保育ビジネスの発展を阻害する諸問題を、解決する糸口はあるのでしょうか? 保育園経営の実情を探ります。

保育に「商売」を持ち出すと、拒否反応を示されるが…

保育所の収入は子どもの人数で決まっているため、利益を残そうとすれば保育士の人件費を下げなければいけないということを『なぜ保育士の処遇は改善されないのか…「暗黙のルール」に絶句』で述べ、これを改善するには、本業があり、保育園で「商売」する必要性がない経営者に参入してほしいと提案しました。

 

そのうえで、矛盾した表現ですが、筆者は「保育園を商売として考えてほしい」と思っています。日本人には「商売」=「金儲け」=「悪」という思考回路になっている方が多く、保育をはじめとする福祉サービスで「商売」を持ち出すと拒否反応を示す方がたくさんいらっしゃいます。

 

しかし、本来、商売とは、まじめにコツコツと働いている人たちの商いです。いまでも地方のイベントに金銭的、人的で協力しているのは地元の商工業者なのです。

 

保育園を商売として考えた場合、保育園は、保育士が子どものお世話をするという役務提供型ビジネスです。また、人件費率が60%を超える労働集約型ビジネスです。つまり、商品と店員が一致しているということです。

 

ラーメン屋でいえば、少しくらい店員の接客態度が悪くても、ラーメンが絶品だったら人気店にもなりますが、保育園は、保育士そのものがラーメンであり、店員なのです。

 

つまり、どれだけ接客態度がよくても、肝心のラーメンが不味ければ意味がありません。もし、ラーメン屋の店主が「とにかく材料は安ければいい」という考えだとしたら、そのラーメン屋は繁盛するでしょうか? 保育士を商品と考えれば、原材料費ともいえる保育士の人件費はけちけちせず、保育士は大切にしなければいけない存在だということがご理解いただけると思います。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
(※画像はイメージです/PIXTA)

 

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河村 憲良

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