企業による「小規模保育所」運営ビジネス…開園までのスケジュール管理と行政との交渉(半年前~3ヵ月前)

企業による「小規模保育所」運営ビジネス…開園までのスケジュール管理と行政との交渉(半年前~3ヵ月前)

企業による保育園ビジネス参入には、事業多角化による経営安定や子育て世代の女性従業員の定着など、数多くのメリットがあります。では実際に保育園事業へ参入・小規模保育所の経営を実現する場合は、どのような手順を踏めばいいのでしょうか。ここでは、開園半年前を起点として、時系列順に必要な手続きを詳述していきます。

 

●「自費で整備するので整備費は不要です」というセリフの威力

 

ここで本記事の最も核心ともいえるセリフをお教えします。それは「自費で整備するので整備費は不要です」というものです。

 

前述の「計画に基づく」と回答のあった自治体も、それは都市部のような「公募が決まっているから個別申請を受けないよ」ではなく、そもそも整備費の予算を立てていないだけなのです。

 

保育を担当する窓口の職員は、住民からの隠れ待機児童に対してのクレームに対応されている方です。予算があるなら保育園を増やしたいとも考えていますが、地方自治体にはお金がありません。そこに予算は不要ですという事業者が現れれば、まさに渡りに船なのです。

 

実際、先ほどの門前払いに近い対応だった自治体にも、筆者たちが自費で開業する旨を伝えると、すぐに検討に入っていただき、無事、2021年4月開園予定となりました。

 

逆に「待ってました!」という対応の自治体は、想定していたテナントが地元の方から「よく道路が冠水する」と教えられたので保留になりました。その際も、「2、300m離れたところに公共施設があるから、そこへ避難すればいいのでは」との発言がありましたから、未満児保育に対するニーズの高さを窺い知ることができます。

 

そもそも、民間企業が新しい店舗を出店させるときに、開業費用が必要なのは当たり前のことです。筆者は保育ビジネスを商売として考えてほしいので、開業費まで税金をあてにするというのはどうかと思います。

 

もちろん、大規模園を建設するとなれば何億円もかかりますから、それを自費で賄えるわけがありませんが、筆者の提案する小規模保育園は、定員12人で、30坪くらいの大きさです。未満児ですから大型遊具もいりませんし、飲食店のような厨房設備も不要です。開業資金としては1000万円くらいで十分だと思います。

 

●保育ビジネス成功の秘訣は「目先の利益を追わないこと」

 

ところで、保育業界には一般企業のビジネス感覚を導入して効率的な運営をしてほしいと願っていますが、すべてを民間の感覚で運営するのがいいともいえません。例えば、新たに保育所をオープンする場合、4月から受け入れても、すぐに定員がいっぱいになることはありません。5月、6月と徐々に入園して8月くらいに満杯になるのが理想です。

 

ところが民間企業が参入する場合、4月の第2週くらいで定員がいっぱいにならないと、保育士の数を減らしたり、休園してしまったりすることがあります。それは保育業界の事情を知らな過ぎるために起きていることです。

 

保育ビジネスは安定的な収益が期待できますから、あまり目先の利益ばかりを追い求めてもうまくいきません。ですから、半年くらいの運転資金を用意し、子どもの数が少なくても、絶対にパート保育士の出勤を減らしたりせず、約束どおりのシフトで勤務してもらい給料を払い続けてほしいと筆者は考えています。

 

一方で、保育園の利点は収入が先に入ってくる点です。介護事業などの保険適用サービスは2ヵ月後に入金されるので、それまで無収入で運営しないといけませんが、保育事業の場合、その月の1日時点の子どもの数で保育給付費が決まるので、早く請求すれば、その月の中旬には入金されます。

 

保育園の最大の支出は人件費です。つまり、4月開園なら、職員の給与は翌月の5月から発生するわけですが、4月分の運営費は4月に入金されます。先に1ヵ月分の収入が入るのはキャッシュフローの観点からも大きいです。

ステップ2:保育所の場所を確保しておく

次に、保育所の場所を確保します。小規模保育所の場合は、園庭が必須ではありません。近場に神社でもいいですし、公園でもいいですし、散歩に行ける範囲に遊べる場所が確保できれば、問題ありません。一般的な賃貸物件にテナントとして入る方法でも構わないわけです。

 

ただ、注意をしなければいけない点があります。その一つは、非常口です。保育所を含め福祉施設の場合は、非常口が必要になります。貸店舗には非常口がなく、出入り口が玄関だけの物件が少なくありませんので注意が必要です。

 

また、2階以上となると、さらに条件が厳しくなります。非常口は、外階段で1階へおりられることが必要です。内階段は認められません。必ず2階から外階段を使って避難できる状態でなくてはいけないのです。

 

ビルによっては、一つの階に複数の部屋があるケースも多いでしょう。その場合、非常口はビルの入居者が共有で使うものも認められません。保育所専用のものが必要です。部屋から出て廊下を通って非常口に行くのでは駄目なのです。部屋から直接、外階段を使って、避難できるようになっていなければなりません。

 

また、トイレが共有になると保育所には使えません。保育所専用で利用できるトイレを確保しなければなりません。

 

ですから物件を選ぶときには、できるだけ1階を選ぶとよいでしょう。その意味では、都市部よりも郊外のほうが物件を探しやすいと思います。

 

ただ、難しく考える必要はありません。認可保育所の場合は、企業主導型保育所と違い、事前に物件を確保していなくても自治体の職員は相談にのってくれます。そして、多くの自治体の職員は親切なので「ここでやろうと思うんですけど」と相談すると、わざわざテナントを見に来てくれます。筆者自身、「条件を満たすかどうかは申請書類を見て判断することですね」とあしらわれた経験は1カ所しかありません。

 

ただ、自治体の職員は設備基準を満たすかどうかという観点からの判断となりますので、保護者受けのよさなどを考慮すると、初めて保育所を運営する人は、設計士など保育所がよく分かっているプロに相談したほうがよいでしょう。

 

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安定収益と社会貢献を両立する小規模保育園経営

安定収益と社会貢献を両立する小規模保育園経営

河村 憲良

幻冬舎MC

保育園経営は企業の参入が難しいと思われがちだが、実際はそうではなく安定収益をもたらし、社会貢献もできるビジネスである。 なかでも小規模保育園なら、保育園業界に山積する問題を一挙に解決。 本書では開業の流れか…

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