「確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年このような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

「実家売却」親が老人ホーム入所の場合は特例も

それは、つぎのふたつの条件をいずれも満たした場合、「空き家特例の条件に合致しなかったとしても、3000万円の特別控除が認められる」というものです。難しい言いまわしですが、ひとまず条件をそのまま記載します。

 

①被相続人が介護保険法に規定する要介護認定等を受け、相続の開始の直前まで老人ホーム等に入所をしていたこと。
②被相続人が老人ホーム等に入所をしたときから、相続の開始の直前まで、その家屋について、その者による一定の使用がなされ、かつ、事業の用、貸付けの用又はその者以外の者の居住の用に供されていたことがないこと。

 

たとえば、実家で一人暮らしをしていた父親が、要介護認定を受けて、老人ホームに入所したとします。父親は、いずれ体調が回復したら自宅に戻るつもりで、空き家のまま管理していたものの、残念ながら自宅に戻ることなく亡くなってしまったというケースです。

 

このような場合においては、相続人が売却しても3000万円の特別控除が認められる可能性があります。

 

これらの特例は、「両親の自宅をどう処分するか」という問題を考えるときに、頭のなかに置いておきたいものです。というのも、両親の世代が購入した不動産は、地価が上昇する前に購入したケースが多く、譲渡所得が発生します。とくに先祖代々相続してきた土地に実家があるような場合は、ほぼ確実です。

 

そのため、両親の自宅を相続して、使わないからといって売ろうとすると、かならず税金の問題が出てくるでしょう。そのときに使える特例なのです。


 

本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2021年4月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。

 

小林 義崇
フリーライター 元国税専門官

 

 

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確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

小林 義崇

河出書房新社

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