「確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年このような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

自宅売却、転居から2年後と4年後、得なのは?

正解:「転居してから4年後」では使えなくなる特例がある

 

「3000万円の特別控除」や「軽減税率の特例」の条件には、「住まなくなった日から3年を経過する日の属する12月31日までに売ること」というものがあります。つまり、この期限を1日でも過ぎると、特例が使えなくなってしまうので、ひじょうに大きな損になってしまいます。

 

なぜ、このような条件があるのかというと、3000万円の特別控除などの特例は、「居住用」であることが条件になっているからです。この判定は、基本的には売却する時点でなされるのですが、住まなくなった日から3年という猶予が与えられていると考えてください。

 

親が亡くなるまで一人暮らしをしていた物件の売却は相続した人が居住していなくても特別控除の対象になるという。(※画像はイメージです/PIXTA)
親が亡くなるまで一人暮らしをしていた物件の売却は相続した人が居住していなくても特別控除の対象になるという。(※画像はイメージです/PIXTA)

 

ただし、状況によっては住まなくなった日から3年を超えてしまったときの救済措置が用意されています。その点も説明しておきましょう。

 

3000万円の特別控除に関して設けられているのが、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(以下、「空き家特例」)というルールです。

 

ポイントとなる条件は、「相続開始の直前において、被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと」というもの。つまり、親が亡くなるまで一人暮らしをしていた物件を相続して売るようなケースが対象になるということです。

 

このような物件を相続人が売れば、相続人自身が居住していなかったとしても、3000万円の特別控除を受けることができます。

 

ここで、少し疑問に思いませんか? 人にもよりますが、誰もが自宅で最期を迎えられるとは限りません。とくに介護が必要になれば、介護老人施設などに入所するのが一般的でしょう。そこで、さらなる救済措置も平成31年度税制改正により設けられました。

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