「確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年このような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

自宅売却損、ローンで買い替え、賃貸に、得なのは?

正解:自宅を買い替えて10年以上のローンを組めば、大きな節税効果あり

 

「持ち家と賃貸、どっちが得?」という議論は昔からなされていますが、税金面だけを考えると、持ち家のほうが得です。

 

たとえば、住宅ローン控除は、自宅を買ってローンを組んだ人にしか使えません。これまでに説明した3000万円の特別控除や軽減税率の特例なども同様です。

 

ここで紹介する特例は、譲渡損失が出たときに使えるものです。たとえば、2000万円で買ったマンションが1000万円でしか売れなかったようなケースをイメージしてください。

 

住宅ローン控除は、自宅を買ってローンを組んだ人にしか使えないという。(※写真はイメージです/PIXTA)
住宅ローン控除は、自宅を買ってローンを組んだ人にしか使えないという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

譲渡所得は、申告分離課税なので、総合課税である給与所得や事業所得などを合算することはできません。唯一できるのが、譲渡所得どうしで合算するというものです。

 

しかし、1年に複数の譲渡所得がある人はそれほど多くないはずです。一般の人が、複数の不動産を1年のうちに売却するということは、ほとんどないでしょう。そうすると、自宅を売って出た譲渡損失は、節税に一切活かされないということになってしまいます。

 

しかし、ここであきらめてはいけません。譲渡損失を活用できる特例が存在するからです。この特例は、国税庁のホームページでは「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越し控除」と記載されていますが、とても長いので、税務職員は根拠条文である租税特別措置法第41条の5から取って「41の5(よんいちのご)」と呼んでいます。


 
41の5を使うと、自宅の売却損を、総合課税所得とも合算(損益通算)できるようになります。

 

さらに嬉しいのは、損益通算をして、使い切れなかった損失がある場合、翌年以後最長3年間繰り越せるという点です。

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確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

小林 義崇

河出書房新社

クイズ形式で出題。ベスト・チョイスはどっちか? 青色申告or白色申告。開業届を出すor出さない。家族を雇うorパートを雇う。iDeCo or小規模企業共済。郵送で申告or e‐Tax。国税専門官として数多くの申告相談に携わった著者…

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