日米企業による「株主還元策」の違い
日本企業は損益計算書を重視する一方、バランスシートへの意識が低く、現預金を貯めすぎることが株主のみならず、政治家からも批判されます。米国企業は無駄な現預金は持たず、資金が余っていれば、自社株買いや配当を通じて株主に返却して、効率的なバランスシートを維持します。
FRBの“Flow of Funds”によると、米国企業は2019年にグロスで2609億ドル(27兆円)の社債を発行し、4388億ドル(46兆円)の自社株買いを行ないました。米国企業は資本コスト(Weighted Average Cost of Capital=WACC)意識が強いので、金利が低ければ、負債を増やして資本コストを引き下げるべきだとの考え方が働きます。
S&P500企業は2019年に1.1兆ドル(115兆円)の純利益に対して、5200億ドル(55兆円)の配当と7300億ドル(77兆円)の自社株買いの合計1.25兆ドル(130兆円)と純利益を上回る株主還元を行ないました。すなわち、配当と自社株買いの比率は4:6で、配当利回り1.9%、自社株買い利回り2.6%の合計4.5%の株主還元利回りでした。
一方、東証一部企業は2019年度に約30兆円の純利益に対して、13兆円の配当と7兆円の自社株買いを行ないました。すなわち、配当:自社株買いの比率は65%:35%。配当利回りは2.2%、自社株買い利回りは1.2%で、総還元利回りは3.4%でした。
米国企業の自社株買いが「株価指数の上昇」に寄与
S&P500企業の純利益と配当は東証一部の4倍以上で、自社株買いに至っては10倍以上となります。株価が役員報酬に連動しているので、米国企業は借金を増やしても、自社株買いをして株価を上げようというインセンティブが働きます。
横並び意識が強い日本企業の配当性向が30%前後に集中しているのに対して、米国企業は成長ステージに応じて高配当性向企業と無配企業に二極化しています。
日本企業になぜ配当性向30%+自社株買い20%=総還元性向50%かと尋ねれば答えられない企業が多く、トヨタ自動車がそうした株主還元策のモデルケースになっていると考えざるを得ません。
また、日本企業は年2回配当が一般的ですが、米国企業は四半期配当が普通です。HPE(Hewlett Packard Enterprises)は2020年3QにGAAP EPS0.01ドルに対して、0.12ドルの1株当たりの配当と、EPSを大幅に上回る配当になりますが、ノンGAAPのEPSは0.32ドルなので、GAAPとノンGAAPで配当性向が異なります。
HPEは3Qに9.2億ドルのフリーキャッシュフローを生み、流動性資産は133億ドルと信用格付けを維持するのに十分強固なバランスシートを持ち、1.5億ドルを配当の形で株主還元したと述べました。
自社株買いの12ヵ月増減と、半年間のラグを取った株価指数の12ヵ月変化率は高い相関があり、米国の自社株買いは米国株の持続的な上昇に大きな貢献をしたと推測されます。
統計的な分析によると、2010年以降の5.5兆ドルの自社株買いが、米国株式の時価総額を約10兆ドル(実際の増加額の約半分)増やしたと計算されます。
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