「スピンオフ」とは、会社の1部門を切り離して独立させることを言います。米国では年間50~60社がスピンオフをしていますが、日本では1社しか事例がありません。本記事は、米国企業がスピンオフをする目的を解説します。※本連載は、菊地正俊氏の著書『No.1ストラテジストが教える 米国株投資の儲け方と発想法』(日本実業出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

スピンオフの目的…事業を集中して国際競争力を維持

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

スピンオフとは会社を2部門に分けて、新会社の株式を以前の会社の株主に割り振る会社再編の手法です。

 

技術革新など、変化が激しいなか、コングロマリット的な企業だと、1人の社長またはCEOが複数の事業部門を見切れず、変化への対応に遅れる可能性があります。本業で稼いだ資金を、新規事業の種まきに使うのはいいのですが、いつまでも儲からない旧来事業につぎ込むのは問題です。

 

地方に本社がある地場企業がコングロマリット的な経営を行なうのは問題ないと思いますが、国際競争する企業であれば、1つの事業に集中したほうが国際競争力の維持につながります。

 

上場コンサルティング会社であるフロンティア・マネジメントの松岡真宏代表取締役は、著書『持たざる経営の虚実』のなかで、

 

「ジャック・ウェルチ元GE CEOは、『将来的にすべての事業は、業界ナンバーワンかナンバーツーになるものだけにフォーカスする必要がある』と述べたことが、日本では『本業だけに集中する』という意味に誤訳された。

 

ウェルチ元CEOは20年間に、約70の事業から撤退したが、M&Aや種まき等によって1000もの新規事業を生んだ」と述べています。

 

ただ、ウェルチ元CEOはCEOとしての能力が高かったので、コングロマリット的なGEを巧くマネジメントできましたが、その後のCEOは経営手腕に劣ったため、GEの業績は長期低迷することになりました。

米国PayPalは、eBayからスピンオフして大きく成長

米国の企業経営者は株主の利益のためになるのであれば、会社を分割することを厭いませんが、日本の大企業の経営者は利益や株主価値よりも、大きな売上の会社の社長でいることを望み、また従業員も同期入社的な村意識があるので、いったん入社した会社が分割で別会社になることを望まないのかもしれません。

 

官僚的な本社機能であることが多い日本では、2017年にスピンオフが導入されたのに、コシダカホールディングス1社しか使いませんでした。

 

米国では年間50〜60件のスピンオフが行なわれており、しばらく見ていないと会社名が変わってしまい、どの会社だったかわからなくなることもあります。

 

米国のスピンオフには約半数のケースで、アクティビストが関与しているといわれます。グローバル・マーケットプレイスのeBayは、アクティビストのカール・アイカーン氏の提案を受けて、2015年にeBayとPayPalを独立した上場会社として分離することを発表しました。

 

「過去10年以上にわたって両社は1つの会社であることが相互の利益につながっていましたが、グローバルなECや決済事業の急速な変化に伴い、両社は異なる競争の機会とチャレンジに直面しているため、両社は別々の成長機会を追求したほうが、株主価値の増大につながるとの結論に至った」と述べました。

 

このスピンオフの結果、PayPalはeBay傘下のままだったら取引できなかったグーグルやアップルなどとの取引も可能になりました。PayPalはその後大きく成長して、時価総額2500億ドル(約26兆円)と米国を代表するフィンテック企業となりました。

 

 

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