なぜ米国「アップル」は自社株買いを増やしたのか?
自社株買いはEPSを押し上げ、経営者が「自社株が過小評価されている」というメッセージを市場に送ることになります。所得水準によりますが、配当にかかる税率よりキャピタルゲインにかかる税率のほうが低いことが、配当より自社株買いが好まれる理由です。
たとえ、税率が同じだとしても、配当が受け取った時点で税金がかかる一方、自社株買いは株式を売却するまでキャピタルゲイン税がかからないので、時間価値が大きいと見なされます。
日本企業は時価総額が小さい企業が多いので、自社株買いをすると株式の流動性が低下する懸念が出ますが、時価総額が大きい米国企業はそうした懸念がありません。
ファイナンスの理論としては、配当は減配しにくい一方、自社株買いは機動的にできるので、中長期的な業績拡大に自信がある企業は増配、キャッシュフローの拡大が一時的だと思う企業は自社株買いを行なうべきとされます。
米国企業も1980年代初頭には配当が自社株買いの5倍もありましたが、1990年代に自社株買いが配当を上回るようになりました。
アップルのIRページのFAQ(よく尋ねられる質問)の「アップルは自社株買いプログラムがありますか?」によると、アップルは2012年度〜2020年度に3787億ドルの自社株買いと1026億ドルの配当等で、4974億ドル(約52兆円)もの株主還元(Capital Returned)をしていますが、これは米国大企業の株主還元が桁違いであることを示します。
アップルが株主還元を増やした背景には、著名アクティビストのカール・アイカーン氏等から、「アップルは銀行のように行動しており、キャッシュは金利ゼロで山積みしている」と指摘されて、株主還元増加の圧力を受けたことがあります。
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